ついに発売! 渋谷直角6年ぶりのコラム集『コラムの王子さま(42さい)』より、収録コラムの一部を特別掲載。第2回は、世の不倫報道について思いをめぐらして気づいた、あの大スター(食べ物)のまさかの不倫疑惑!? 今回も「何のこっちゃ」が満載です。
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鶏の唐揚げ
イメージの良いタレントの不倫報道とかがあると、「正しくない」ものはどんだけ叩いてもざまあ、的な風潮になっているのがちょっとコワイ。「良いやつビジネス」をしてるぶんの落差もあるだろうが、あまりに「透明」な「正しさ」ばかりを求めると、どんどん虫や動物のようにシンプルに生きなくてはいけなくなる。それも素敵かもしれないが、人間はもっと弱くてイビツで、そうシンプルにはいかない。いろんなエラーが起きる、その不都合さをある程度は許容しあわないと、歪みが出てくる。「正しさ」を求めるから「悪」はなくならない、とも言えるだろう。その矛盾は、どうしても抱えなくてはいけないのだ。
……マジメな書き出しになってしまったが、そのくらい「正しさ」とは危ういもので、その行使には気をつけなくてはいけない。実際、僕が「アイツ、ヤバイんじゃないか」と心配している存在がいる。
「鶏の唐揚げ」だ。
長い間売れている。嫌いな人も少ない。イメージも良い。なにせウマイ。ごはんが猛烈に進む。イビツな丸みのパリパリボディに、中はプリプリのギャップも愛おしい。口いっぱいに「鶏の唐揚げ」とごはんをほおばったときの、あの幸福感はスゴイ。ちょっと不安がある居酒屋に入っても、「鶏の唐揚げ」を注文すればそこまで失敗はない。日常の不動のレギュラーとして君臨している。
それだけに心配である。イメージが良いぶん、不倫がバレたときのダメージはデカイ。ここだけのスクープだが、実際アイツは不倫、裏の顔を持っている。
「竜田揚げ」だ。
「竜田揚げ」のときのほうが、醤油やみりんに漬け込み、片栗粉という行程。本妻(小麦粉)とはえらく態度が違う、手間をかけた付き合いをしているのだ。奥さんの気持ちに寄り添えば、すごく哀しい気持ちになるし、子ども(レモン)も複雑だろう。だが、それでも我々は、「正しさ」のもとに「鶏の唐揚げ」を辞任まで追い込んでしまって良いのか? 「鶏の唐揚げ」のレギュラーを奪ってもいいのか? あくまで「当事者のモンダイ」であるはずのことに、我々は口を出し、気づけば再起不能なほど叩きのめしている。
ただ、叩くなとは言わない。鶏肉は叩くと柔らかくなって、より美味しくなるからである。もう食えないほど叩くかどうかは、我々の力加減次第なのだ。……わかったな(何が?)。