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「行動する時が来た」「靖国の英霊と会話できる」陸自特殊部隊元トップの“危なすぎる世界観”

2021/02/01
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5点の陰謀論を防ぐ65点の物語を

 現在、ネットでは、コロナ禍やアメリカ大統領をめぐって、以上と大同小異の陰謀論が渦巻いている。

「ネットで真実を知った」者の成れの果てと、かれらを笑うのはたやすい。だが「もっと確かな情報源を」という指摘自体が「マスゴミ批判」で封じられている以上、事態は深刻である。

 そもそもかれらは、一般的な知性をもち、それどころかとても勉強熱心で、平均的な日本人よりも本を読み、そして自分の頭でよく考えている。にもかかわらず、このような世界観に陥ってしまう。そこでなお既存の権威を振りかざすのはあまりに虚しい。

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 では、どうすればよいか。ひとつの提案として、メディア上に(オンライン記事でも、ウェブ動画でも)、考えるヒントになるような、よりまともな物語を流していくことが考えられるのではないだろうか。具体的には、「ディープステート」を「農業を通じて国に貢献」などで上書きしていくということである。

 あえてざっくり言えば、5点の陰謀論よりも、65点の愛国の物語のほうがまだマシだということである。

©️iStock.com

“100点満点主義者”が壊滅させたもの

 SNSには、1点の間違いも許さない、リゴリスティックな100点満点主義者がすっかり多くなってしまった。そこで65点の物語はよく血祭りに挙げられている(「国に貢献」というが、そもそも近代国民国家の枠組みを自明視していることが暴力的であり、思慮が浅く云々)。とはいえ、65点の物語を壊滅させたあとにやってくるのは、100点満点主義者が尊敬される世界ではなく、逆に批判などまったく意に介さない、5点の陰謀論が蔓延する世界ではないだろうか。現状はむしろそうなっているように思えてならない。

 われわれは不完全な存在である。100点満点主義者も、自分の得意分野以外ではしばしばデタラメなことを言っている。であれば、65点ぐらいの物語を公共財として鍛えていくことが、5点の陰謀論を防ぐ防波堤になると筆者は考える。

 今回のニュースについても、ただ笑い、嘆き、蔑んで消費してしまうよりも、このような代替案を考えたほうが生産的で有益だと思うのだが、いかがだろうか。

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