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「町田市民は、東京と神奈川の間で押し付け合われていると気づいてる」 国道16号線がつなぐ「郊外」のリアル

三浦しをんさん、柳瀬博一さん対談

genre : ライフ, , 歴史, 読書

note

 町田に詳しすぎて怖いですよ、柳瀬さん(笑)。今の市長さんは自民党系ですが、町田は市政においても、割と代々、革新系の政党が強いのかなという印象がありますね。昔から福祉政策にも力を入れていますし。

町田は文芸にゆかりが深い場所

 作家の方も町田には昔からいろいろな方が住まわれていますね。編集者時代にお世話になった赤瀬川原平さんが玉川学園にお住まいで、何度かお邪魔しました。

 あの有名なニラハウスですね。

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 はい、屋根にニラが生えているという(笑)。子供時代に大好きだった遠藤周作さんの『ぐうたら人間学 狐狸庵閑話』(講談社文庫、1976年)では、町田の隣の柿生の山里話も出てきます。

 町田の新刊書店で学生時代にバイトをしていたのですが、片岡義男さんが店頭の写真を撮ってご著書に収録してらして、「わー、お店が載ってますよ!」と店長と喜んだ記憶があります。

 やっぱりアルバイトは本屋さんでしたか。

 本屋関係のアルバイトしか続かなくて(笑)。

繁華街、住宅、農家・酪農家が共存する多様性

 わかる気がします(笑)。そうそう、しをんさんの文章も収録されている『ふるさと町田文学散歩 鶴見川・境川源流紀行』(茗渓堂、2014年)という本を見つけて読みました。文学好きの前町田市長の寺田和雄さんが、他に白洲正子さんや柳田國男さんなど32編の町田在住の作家の文章を編纂された、町田文学愛に満ちた一冊です。町田には、「町田市民文学館 ことばらんど」もありますよね。

©新潮社

 実は、岸由二さんという、進化生態学の立場から「流域」によって土地を考える方がいらっしゃいますが、その延長で環境保全や教育、都市再生にも携わり、 鶴見川流域の保全にも尽力されているんです。私の大学時代の恩師でして、そのご縁で16号線方面にここ30年くらい保全運動の手伝いで頻繁に足を運ぶようになって。さきほどの亀尾川、じゃなかった鶴見川の源流の保全の親玉も岸さんでして。

 それで柳瀬さんも、16号線研究者になった(笑)。

 はい(笑)。話がそれましたが、その町田在住の岸先生が『ふるさと町田文学散歩』の序文を書かれています。岸さんのご縁で自然探究のため町田を随分歩き回りました。

 町田の駅前は繁華街ですが、少し離れたらのんびりしたもので、農家をやっているおうちも多いし、酪農家もいらっしゃいます。風景も人々も多様な、いい町なのです。