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「町田市民は、東京と神奈川の間で押し付け合われていると気づいてる」 国道16号線がつなぐ「郊外」のリアル

三浦しをんさん、柳瀬博一さん対談

genre : ライフ, , 歴史, 読書

 都心から30キロほどをぐるり、コロナ禍の移住先として最近注目を集めているのが国道16号線のエリア、首都圏の「郊外」だ。横須賀、横浜、町田、八王子、川越、柏、木更津……と16号が走る中でも、今回は町田にフォーカス。長年町田に暮らした作家、三浦しをんさんに聞く。

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「まほろ駅前」シリーズのモデルは町田だった

柳瀬博一(以下「柳」) しをんさんと初めて会ったのはなんと2005年、なぜ覚えているかと言えば、2004年放映の大河ドラマ『新選組!』の話を実に熱く語られていたからなんです。

三浦しをん(以下「し」) 語りましたねー、しかも合コンの席で。柳瀬さんは当時、編集者をしてらしたので、「説明が面倒だから、小説家だってことは黙っておこう」と思って、私は町田の本屋さんに勤めていると職業詐称したんですけど(笑)。そこから町田の話で盛り上がり、初対面ながら柳瀬さんは「国道16号線」の話を延々となさっていました。縄文時代から、今の16号線沿いのエリアには人が多く住んでいた、とか。「そうだったんだ、おもしろいなあ」と思ったんですが、柳瀬さんはその後もずっと、16号線の地形や歴史や文化を調べ続けて、このたびめでたく、『国道16号線』というご本を出版された。16号線への愛と執念の結晶ですね。

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 そうなんです。しをんさんはそのすぐ後に『まほろ駅前多田便利軒』(以下『まほろ』)を執筆されました(書籍化は2006年、直木賞受賞作に)。何を隠そう、作中で、亀尾川で藻を取って石を洗っている婆さんは私でして、あの川は鶴見川です(笑)。『まほろ』シリーズ(『まほろ駅前番外地』『まほろ駅前狂騒曲』と続いた)の舞台のモデルとなったのは町田ですし、その後の『ののはな通信』は横浜のミッション系の女子高生が主人公ですし、町田から横浜にかけては、お詳しいから小説の舞台にされていますね。

 はい、中高時代は横浜の学校に通っていたので。横浜は、黄金町のあたりには雑多な町の面白さが、伊勢佐木町には映画館や本屋さんがあって、都会的で楽しい町です。