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 林海象の『濱マイク』シリーズはあのあたりですね。

 学校帰りに、横浜日劇(現在はシネマ・ジャック&ベティ)で見ましたよ! 趣のあるいい映画館でした。

『国道16号線「日本」を創った道』(新潮社)より

 国道16号線は、地図の左下の横須賀の走水からですと、横浜・関内の横浜スタジアムのあたりを抜けて、国道1号線と交差した後、緑区界隈を抜けて、町田の方向へ行きます。八王子を経て、埼玉や千葉方面に抜けて最後は木更津の先の富津まで、実延長はぐるりと326.2キロです。 

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著者撮影

 町田はその「16号線エリア」の代表格の町です。『まほろ』シリーズでは一応、「まほろ」という架空の町に名を変えていますが、町の縁をなぞるように16号線とJ R八王子線が走り、「ハコキュー」が交差している。

 作中のJ R八王子線がJ R横浜線で、「ハコキュー(箱根急行)」が小田急線です。まんま、町田ですね(笑)。

「郊外=無個性」という安易なレッテルは許しがたい

 ハコキューは下北沢を通っていますもんね。映像化(『まほろ』三部作は映画とテレビドラマになった。主役の二人を演じた瑛太と松田龍平の絶妙なコンビぶりが話題に)の際は、町田総出で撮影に協力してくれたとか。でも、実は『まほろ』まで、町田はあまり小説の舞台になっていなかった気がします。

 そうかもしれませんね。郊外の町はどこもかしこも同じで無個性だと思われがちですし。ただ私は、すべての町を「郊外」とまとめてしまうのが本当に腑に落ちなくて。実際は当然ながら、それぞれの町に独自の色や個性があるわけで、まほろのモデルにした町田は、こういう町なんだよ、と小説で書きたかったんです。「郊外=無個性」という安易なレッテルは許しがたいな、と。

 郊外とか雑に言うな、ですよね。何度も16号線を走っていますが、徐々にまったく違う景色が連なっていき、それぞれ町や地形で全く違う。

©新潮社

 例えば下町に住む人たちだって、「下町=人情」といったテンプレで括られるのには違和感があると思います。人情ももちろんあるけれど、それだけではないはずです。

 下町だってそれぞれ、郊外だってそれぞれ、一緒くたにせずに解像度を上げてそれぞれの場所を見るべきですね。町田住民にしたって、ハコキューに乗って東京に通われる方もいれば、地元で商売をする人もいれば……。