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ANA機内食販売から振り返る 機内食102年の“進化”がすごかった

2021/03/31

genre : グルメ, 企業, 娯楽,

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耳栓やノイズキャンセリングヘッドホンで機内食がより美味しくなる

 こうした研究結果をふまえて、地上のレストランの味を再現することに心血をそそぐよりも、機内の特殊な環境をふまえたうえで、その悪条件を少しでも軽減するための試みが続けられてきた。たとえば、21世紀に入り、機内食で真空調理が普及し始めた。真空パックされた料理をお湯に入れて温めなおすことで提供できるため、これまでのオーブンの再加熱では表現できない火入れが可能となった。また、塩味や甘味は機内で感じづらくなる一方、うまみに関しては影響がないため、ノリや干しシイタケ、トマトなど、うまみ成分が多い食材を隠し味として使うことも一つの解決方法となっている。

 機内食をよりおいしく食べるために乗客にできることもある。たとえばB787やA350のような新鋭機では、湿度が従来の機種よりも高くなっているのでこうした機体を選ぶ。また、食べるときに鼻の近くを湿らせることでより匂いを感じられるようになる。さらに、食べるときは窓のシェードを開けたり、机上の機内食にライトを当て、耳栓やノイズキャンセリングヘッドホンをつけることも対策として考えられる。

©iStock.com

 今後、機内食はどのような方向に進化していくのだろうか。フランスの航空関連機器メーカーのゾディアック・エアロスペースは機内で機内食を客に配るロボットを開発している。そうなると、キャビンアテンダントがサービスするよりも感染リスクは低いが、あまりに味気ないかもしれない。

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 昨今の機内食人気には、海外に出られないので、その代替手段として利用する意味合いもあるだろう。だが、機内食は前述したように濃い味つけや派手な色合いも含めて機内で食べることを目的にしてつくられたもの。コロナ禍がひと段落して、再び機内で機内食にありつける日はいつになるだろうか。

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