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どうする、どうなる宇都宮ライトレール “路面電車のプロ”が語る経済効果

開業は2022年予定、なぜこの時代に路面電車か?

2017/10/16

「開業は2022年。まだまだ先だと思うかもしれませんが、建設工事はもちろん車両の選定やデザイン、運転士など従業員の採用・訓練とやることは目白押し。時間はあるようでないんですよ」

 と、いきなりアツく話してくれたのは、中尾正俊さん。このお方、日本一の路面電車網を持つ広島電鉄で長年活躍し、常務まで務めた“路面電車のプロ”である。そんな中尾さんが現在「時間がない」と言いつつ取り組んでいるのは、栃木県宇都宮市のLRT(路面電車)建設事業。今の肩書は、「宇都宮ライトレール株式会社常務取締役」だ。

宇都宮ライトレール常務・中尾正俊さん ©鼠入昌史

「今はまだ市から出向してきた社員が2人いるだけ。でも、彼らにはよく言っているんです。『この時代に新しい鉄道会社をつくって新しい路線を作る。これは歴史的な事業だよ』と」

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キヤノン、ホンダ、カルビーの工業団地と宇都宮駅を結ぶ

 このところ、鉄道にまつわる話題はちょっと暗いものが多い。JR三江線の来年3月限りでの廃止やJR北海道の路線存続問題など、“鉄道の危機”ばかりが取り沙汰されている。地方都市での新路線建設、ましてや新たな鉄道会社を立ち上げて……なんて一見夢物語。ところが、そんな時流に反して宇都宮市は新たな路線の建設を進めようとしている。JR宇都宮駅東口から東へ延びて、鬼怒川を渡ってキヤノン、ホンダ、カルビーなど大手企業の工場や研究所が建ち並ぶ工業団地群までを結ぶ「宇都宮ライトレール」。2年前には宇都宮市が中心となって地元企業やバス会社・東武鉄道などが出資する運行事業者として「宇都宮ライトレール株式会社」が発足。中尾さんは、“路面電車のプロ”として事実上この事業を牽引する立場に立っているというわけだ。