「(保育士は)誰でもできる仕事」
ホリエモンこと、堀江貴文さんがTwitterでつぶやいた内容が、大きな波紋を呼んだ。
衆議院議員選挙に関連して、朝日新聞デジタルが「『なんで保育士の給料は低いと思う?』低賃金で負の循環」(10月12日)という記事を掲載した。保育士の待遇や待機児童対策の各党の公約を比較する内容だ。ホリエモンのツイートは、この報道を受けたもの。
HORIEMON.COMでは、ツイートの真意について「誰でも(やろうとしたら大抵の人は)出来る(大変かもしれない)仕事」としている。これに対して、様々な意見が発せられた。
保育士らでつくられる「介護・保育ユニオン」の森進生代表に話を聞いた。
――ホリエモンのツイートについてどう感じましたか?
森 あのツイートは、端的に間違っていると思います。保育士は「誰でもできる仕事」ではありません。この点は、どの保育士も感じたことではないでしょうか。日本の保育は、厚生労働省の「保育所保育指針」に沿って行うことが定められています。インターネットでも読めますので、ぜひご覧いただきたい。保育士は当然この指針を学んでいます。つまり、専門性があるのです。
指針の解説書の中に「保育士の専門性」という項目があります。「子どもの発達に関する専門的知識を基に子どもの育ちを見通し、その成長・発達を援助する技術」や「子ども同士の関わりや子どもと保護者の関わりなどを見守り、その気持ちに寄り添いながら適宜必要な援助をしていく関係構築の知識・技術」など6つの項目が挙げられています。日々の保育の中で専門的な判断を求められるのです。
このような専門性は一般の保護者にはないものです。家で自分の子どもをみることとは質が違うのです。こうした点を踏まえると、「保育士は誰でもできる仕事」なのか? 誰もが、事故を起こさず、成長を担保する中でやっていけるのでしょうか? 答えはノーです。
――保育士が「誰でもできる仕事」だと思われてしまう背景があるのではないでしょうか?
森 堀江さんのツイートに共感する人は多いようです。ただそれは、保育士の社会的評価が低いからだと思います。背景には女性蔑視があるでしょう。「子育ては、女性が家庭内で私的に行うもの」という考え方です。それは間違っています。保育は、子育てを社会で担おうという福祉政策であり、それなりの負担を社会がする必要がありますが、すぐにそのようにはならない。
「子どもと遊ぶくらいなら誰でもできるんじゃないか?」と思われがちですが、0~5歳まで、子どもは、体も心も目まぐるしく成長します。それらに配慮した保育を実現することは並大抵のことではありません。日本の子育てをみんなでどう支えるのか、真剣に考え直さなければなりません。
こう考えると、堀江さんのツイートへの共感は、子育てをないがしろにすることが当たり前になっているからとも言えるでしょう。