最初で最後の告白本と銘打って『生涯投資家』を書いた村上世彰氏。自身の行動原理を一冊に詰め込んだ『多動力』がベストセラーとなっている堀江貴文氏。対談の2回目は、日本を騒がせたあのプロ野球球団買収の話から始まる。

プロ野球球団買収の舞台裏

村上 本には書いてない話だけど、家に三木谷さん(三木谷浩史/楽天社長)と堀江が来たわけよ。で、寿司カウンターで寿司をつまんでいる時、宮内さん(宮内義彦/オリックス社長=当時)が横に座った。覚えてる?

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堀江 はい。

村上 そのとき、宮内さんが「プロ野球球団は持ったほうがいいよ」と言ったの。それを2人でふんふんって聞いてたよね。

堀江 いや、でも、僕はもっと前からプロ野球に興味を持ってましたよ。2000年代前半、元リクルートの高塚猛さんがダイエーホークスの社長をやっていて、彼がすごく有能で、集客にもメチャクチャ成功してて。

村上 うん。

堀江 ホークスってもともと南海ホークスじゃないですか。大阪のダメダメ不人気球団が僕の地元・福岡でトップレベルの人気になっていて、いとこもみんな見に行ってたんですよ。これはすげえなと。それで、ホークスを買うのは無理そうだけど、近鉄ならいけそうだなと思って、投資銀行経由で「近鉄、買えないか」と話をしたんです。

村上 あの時、近鉄は売りに出てたもんね。

堀江 だから、買いにいった。2004年の1月ぐらいに、交渉のテーブルに乗りそうだったんですよ。そうしたら、いきなり春ぐらいにオリックスとの合併の発表があって、宮内さんに持っていかれちゃった。でも選手会が反発して、まだ可能性があると聞いたから「買います」と手を挙げたら、ドカーンといったんです。広告効果はすごかったですよ。

1001号室の秘話

村上 そうだよね。僕もプロ野球球団に大きな価値があることはわかっていた。だから、プロ野球球団を保有する鉄道会社の経営権を取得すれば、球団の価値をもっと顕在化できると思って、西武と阪神に投資した。

堀江 村上さん、西武はともかく阪神は手を出しちゃダメですよ。特別に熱狂的なファンが、理屈ではない気持ちで支えてるチームなんですから。

村上 でも、当時、星野さん(星野仙一/元阪神監督)が泊まっているホテルの部屋にまで会いにいって事前に説明をしたら好感触だったんだよ。忘れもしない、1001号室(センイチ号室)で! それが後に「天罰が下る」と言われてしまうんだから、悲しいよね。どこかで何かが起こったんだよ。

堀江 阪神はアンタッチャブルな存在なんですよ。

村上 虎の尾を踏んじゃったっていうこと? 何でもやってみようと言ってる堀江に、アンタッチャブルとか言われたくないけど(笑)。

阪神はアンタッチャブル……?

堀江 テレビ局も同じなんです。プロ野球は仏様で、テレビ局は神様みたいな話があって。もう、理屈じゃないんですよね。

村上 ああ、フジテレビの話ね(笑)。

堀江 私たちは厳しい就活戦線を勝ち抜いてフジテレビに入ったわけで、ポッと出のよくわからんやつに株を買い占められて支配されるのは許せない、みたいなよくわからない理論がある。

村上 たしかに、だからしっぺ返しは激しかった。でも僕らは、みんながちょっと変だなと思っているところを変えようとアプローチしてきたんです。それを否定したら世の中変わりませんよ。