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山陽新幹線エース運転士が明かす「自動運転にはできない人間のテクニック」

運転中は計算ばかりで、脳が疲れます

2017/10/30
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自分のリズムで乗らないと、何か落ち着かない

 そんな七村さん、連日の厳しい緊張に耐えるべく、出勤時には決まった“マイルール”があるという。それは、職場への出勤は必ず1時間前。そこから決まった順番で運転台のカギを取って乗務カードを取って……と実際に新幹線に乗り込むまでの流れがある。

「自分のリズムで乗らないと、何か落ち着かない。忘れたものがあるような気がするので、集中しきれないんですね。台風などでダイヤが乱れているときは、自分の乗務スケジュールも予定通りにはいかない。そういうときにはあらかじめ先を読んで、起こりうることを想定して準備します。『博多での折り返しは時間がなさそうだな』とか。そうすることで、自分のリズムで乗れる。安心して運転することができるんです。プライベートの旅行では当日まで一切準備しないんですけど、仕事だとやらないと気がすまない(笑)」(七村さん)

 

 他の運転士たちも、それぞれのペースを持っているとか。新幹線の運転士とは、いかにもアスリート、職人気質の連中なのだ。

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「この取材の前に、ちょうど博多から帰ってきました。よく『朝博多にいて10時に大阪にいれるわけがないだろ』と言われますが、新幹線だと2時間半ですから。毎日新幹線に乗っていると、博多も東京もだいぶ近く感じるようになりましたね(笑)」

 新幹線に乗り込んでシートに身を沈めれば、あとは寝ていても本を読んでいても、あっという間に目的地。実に快適な新幹線の旅だが、裏ではその快適さを支えるために頭脳をフル回転させている運転士がいる。今度新幹線に乗るときには、そんな人たちに少しでも思いを馳せてみてはいかがだろうか。

写真=鼠入昌史

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