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「芝居なんかできなくてもいい」と言われて…70歳になった俳優・柴田恭兵が駆け出し時代に“悔し泣き”した理由

8月18日は柴田恭兵の誕生日

2021/08/18
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 62歳になろうとしていた2013年のインタビューでは、《よく60代からは第二の人生なんて言いますが、60代からこそ何もかもが“これから”。いい意味で肩の力が抜けて、おもしろくなるというか。たとえば現場で若い共演者が僕の演技を見ていてくれるとき、昔ならカッコつけて、どうだと言わんばかりの演技をしていたと思います。でも今は、「こんなんですが、いかがでしょうか」といった感じで(笑)、ありのままの自分を楽しめるようになりました》と話している(※7)。

 ちょうどそのころ出演したドラマ『空飛ぶ広報室』を見ると、たしかにその通りだと思わせる。このとき彼が演じた航空自衛隊の広報室長は、お堅い職種らしからぬ調子のよさで、部下があきれるほどだが、いざというときには頼れる上司ぶりを発揮する役どころだった。劇中ではまた、共演者と一緒になってヘリコプターが飛ぶ様子などを体で表現する軽快なしぐさが印象深い。これは東京キッドブラザース時代のミュージカルで体得したものだろう。

柴田恭兵の柴田恭兵たるゆえん

 最新の出演作は、昨年、WOWOWで放送されたドラマ『鉄の骨』だ。建設業界の談合を裏で取り仕切るフィクサーという役どころに、柴田恭兵もこういう役を演じるようになったかと驚かされる。白いひげに枯れた風貌も、いままでの柴田のイメージからがらりと変わった。それでも、一般的なフィクサーのイメージとは一線を画し、おしゃれなスーツをまとい、神木隆之介演じる主人公が同郷と知って親戚のように接するなど、一味違う雰囲気を醸し出していた。

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最新の出演作はWOWOWで放送されたドラマ『鉄の骨』(番組ホームページより)

 年齢を重ね、たとえ肩の力が抜けても、年相応のかっこよさを感じさせるところこそ、柴田恭兵の柴田恭兵たるゆえんなのだろう。70代になった彼は、今度はどんなかっこよさを見せてくれるのだろうか。

※1 近田春夫『調子悪くてあたりまえ 近田春夫自伝』(リトルモア、2021年)
※2 『an・an』2015年7月29日号
※3 『週刊明星』1987年5月7日号
※4 『with』1991年3月号
※5 『èf』1991年8月号
※6 『ステラ』2014年3月28日号
※7 『いきいき』2013年4月号
 

「芝居なんかできなくてもいい」と言われて…70歳になった俳優・柴田恭兵が駆け出し時代に“悔し泣き”した理由

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