『あぶない刑事』に出てくる横浜スタジアム
“港303、応答願います”。舘ひろし扮する港署の刑事、鷹山敏樹が無線を取り、柴田恭兵扮する大下勇次がハンドルを握る。次の瞬間、日産レパードは日本大通りのど真ん中で踵を返し、県庁の横をぶっ飛ばしてどん突きを右に曲がる。バックに流れるのは小比類巻かほるの『Cops And Robbers』だ。『あぶない刑事』で毎度のように繰り広げられるシーンに、自然とテンションは高まっていく。と、言ってもこれは1980年代の回想ではない。2017年12月現在の話である。
今年春から神奈川のローカル局、TVKテレビで『あぶない刑事』が再放送されている。筆者を含め多くの『あぶ刑事』ファンは、本放送開始の1986年以来再放送含め何度となく視ているにも関わらず、週3回の放送を楽しみにしていることだろう。DVDはもちろん、アマゾンプライムでも視聴できるのに、だ。その証拠に夜10時からの放送中、ツイッターでは「#あぶない刑事」がトレンド入りする事もある。
『あぶ刑事』はロケの多くを横浜市中区で行っており、オールドスクールな横浜の風景が頻繁に出てくるので今となってはすべてが貴重な映像である。イセザキモールの古い星型アーチ、ドンキになった新山下のバンドホテル、昔は一般人が立ち入る場所じゃなかった新港ふ頭や赤レンガ倉庫、マイカル本牧(これも今はない)が出来る前の本牧米軍住宅跡地etc。そして現在、多くのベイスターズファンが球場に向かう日本大通りも当時は歩道が狭く、車道がやたらと広くて片側3車線分はあった。冒頭のパトカーがターンする迫力シーンはこの広い車道あってこそ、だ。
日本大通りのシーンでは決まって背景に横浜スタジアムのライトスタンドとスコアボード、照明塔が映りこむ。これを含め劇中でスタジアムを背景にしたシーンは多いのだが、2018年を迎えようとする今、30年以上前の球場の姿を映像で目の当たりにすると、当時の「最新鋭感」が色濃く表れていてハッとさせられる。本放送当時は完成から10年足らず。この頃の横浜スタジアムは、12球団の本拠地の中では西武ライオンズ球場(当時)の次に新しい球場だった。
初めて横浜スタジアムに足を踏み入れたのは開場7年目の1984年。一塁側内野自由席のゲートをくぐった筆者の眼に飛び込んできたのは、田代富雄が内野フライを打ち上げたまさにその瞬間だった。初めて見る生のプロ野球。横浜の空高く、まっすぐ打ち上がった打球は「Y」を象った照明塔が放つカクテル光線の中へ吸い込まれていく。青々とした人工芝にブルーのフェンス、鮮やかなオレンジ色に統一された観客席。スタンド上段から眺めると、2つの円が組み合わさった全体のフォルムと、それを構成するすべての要素が格好良かった。アメフトの試合やライブの時は内野席の一部がグルッと移動したり、マウンドが自動昇降するのも画期的なシステムだった。