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なぜ“情報は21世紀の石油”なのか? 桜井俊・元次官が語る「ICT×地方創生」

情報通信技術政策のプロが考える日本の未来

人口減少に少子高齢化……。日本の「地方」が抱える諸問題にICT(情報通信技術)が見せてくれる明るい未来とは? 総務事務次官を務め、現在は全国地域情報化推進協会理事長である桜井俊さんにお話を伺いました。

桜井俊さん

この時代なりの「豊かな暮らし」を実現するための第一歩

――桜井さんは1977年に旧郵政省に入省されてから、長く情報通信政策に関わるお仕事を続けてこられました。今日お話を伺うICTと地方創生については、どんな関わり方をされてこられたのでしょうか。

桜井 内閣府が「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を進めているんですが、ICT分野とまちづくりに関わる分野については総務省が受け持つわけで、私も関わることがあったということです。現在はボランティア的に関わっている全国地域情報化推進協会で、自治体のシステムの標準化と普及を目的にやっています。

――なぜ、ICTと地方創生の掛け合わせが重要になってきたんでしょうか。

桜井 人口減少や少子高齢化、東京一極集中と言われる中での地方経済の衰退、医師不足という問題。こうした地方が抱える問題群を合理的、効率的に解決するためには、あらゆるデータと社会生活を組み合わせることが大切になってきているんです。情報技術の革新によって住民情報から健康情報に至るまで、さまざまなデータが活用できるようになったわけですから、それを利活用することはこの時代なりの「豊かな暮らし」を実現するための第一歩だと考えています。

情報インフラは最高なのに「もったいない」と思える点がある

――日本は地方の隅々まで情報通信インフラが整っていて、ICT基盤は世界最高レベルだそうですが、まだまだ活用しきれていない部分があるのでしょうか。

桜井 超高速ブロードバンドが利用できる世帯は99.98%(2015年)、光ファイバの契約数の割合はOECD加盟国中1位と、日本の通信インフラは世界最高水準と言っていいでしょう。それなのに「もったいない」と思える点がまだまだあるんです。先日、観光でパラオに行ってきたんですが、まだ衛星通信を採用しているので携帯電話一つとっても非常に繋がりにくい。観光客としては、もっと通信インフラが整っていればなあと思ったのですが、それは日本にも言えることだと思います。

 

――身近なところで言えば、フリーWi-Fiの充実などですか?

桜井 それも大きいですね。一例ですが、福岡市は徹底した無料Wi-Fiの整備をして、観光客にも好評ということです。こういう整備事業、新しいことを行うには、地方自治体と産業分野との協力が必要になってきます。つまりICTがあるだけでは意味がない。そこに掛け合わされる産業がなければデータが活用されずじまいのままです。「情報は21世紀の石油である」と言われるように、まさに情報という石油を使って何ができるか考える時代がやってきたということです。