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壁にぶち当たった大学院生(とオリックス選手)に伝えたい、自信を失いそうな時にどう戦うべきか

文春野球コラム ペナントレース2021

2021/09/17
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 こうして一時の成功は人々を、時により深い絶望へと追い込む事になる。「成功」は時に人に「更なる成功」がある事を認識させ、そしてその「更なる成功」が遥かな高みにある事に絶望するからだ。「上」を目指す事なく、或いは目指す事を諦めているなら、自らのいる場所に安住する事は容易である。しかし、手の届かないように見える高い所を目指す時、人は現在の自分が如何に低い所にいるかを思い知らされる。

 その気持ちはよくわかる。一旦前向きになった心が折れそうになるのは、誰にとっても辛いものだ。でも、そんな時、思い出して欲しい。自分自身の実力を信じ、次なる「成功」に挑み、そこからさらに先に進めると思った頃、君たちの人生はどれほど充実していただろうか。そして、その時、君たちは確かに今よりも「ずっと先」にいなかっただろうか。

「上」にいるのは、ロッテ、ただ1チームだけ

 心が折れそうな時、自分を信じられなくなりそうな時、大事なのはまずは「さっきまでいた所」にまで戻る事を目標にして作業する事だ。遠いかなたにいるどこかの他人を追いかけるのはしんどいけど、好調だった時の自分の姿を追いかけるなら、それほどでもない筈だ。だって、目標は「たかが自分」。ノーベル賞を貰った様な、国際学会のスター教授を目標にしている訳じゃない。そして言ってたじゃない、「先生の時代はもう終わった」って。先生だって昔はそこそこ鳴らしたんだから、まずはその調子で僕が立っている所まで来れれば、君たちはそれだけで結構先に進めると思うんだけどね。

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 そして、一旦過去の自分に追い付けば、自然と「更なる成功」は見えて来る。随分負けが込んできたけど、今だってその差は僅か3.5ゲーム(9月16日現在)。そして「上」にいるのは、ロッテ、ただ1チームだけ。楽天もソフトバンクも、西武も日ハムも「下」にいる。考えてみれば、これだけでずいぶん凄いことじゃないか。

 ロッテさんには少し失礼かもしれないけど、彼らは間違っても、全盛時代のソフトバンクやV9時代の巨人の様な、圧倒的なチームじゃない。いや、どちらかといえば彼らだって、僕たちと同じように、一つずつ「上」を目指して、ここまで這い上がって来たチームじゃないか。大きな成功に裏打ちされた「本当の自信」がないのは、彼らもきっと同じ事だ。そう苦しんでいるのは、君たちだけじゃないんだよ。

 だったら彼らに出来て、君たちに出来ない筈はない。ここは15年間リーグ優勝していないロッテと、24年間優勝していないオリックスで、最後まで立派に優勝を争ってみようじゃないか。大丈夫、そうすれば結果は必ずついてくる。そもそも失敗したって失うものは何もないんだよ。だって、あの暗いムードに覆われていた「シーズン当初」の状態を考えれば、君たちはもう十分すぎるくらい「成功」しているんだから。怖じ気づく必要は何もない。だから、僕たちはその事をちゃんとわかっているし、最後まで見守っているよ。だって、せっかくここまで来たんだから、この瞬間を楽しまなくってどうするのさ。さあ、今シーズンの終盤戦が本当にはじまるのはここからだ。

怖じ気づく必要は何もない

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