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松本清張の小説に最初にでてくる路線はなーんだ? 清張鉄道クイズ10

『清張鉄道1万3500キロ』著者が答える

2017/11/11
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Q6:「清張鉄道」が初めて四国へ延びたのは、どの作品?

A6 『砂の器』で被害者三木謙一の金刀比羅参りです。彼は主人公の警視庁刑事今西栄太郎に負けぬほどの乗り鉄で、吉野山へ行った際、奈良県内の近鉄に相当乗りました。『落差』の細貝景子や『草の陰刻』の瀬川良一も四国のJRに乗っています。『内海の輪』『渡された場面』にも登場していいのですが、はっきり書かれていないのは残念です。

 

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Q7:最初に新幹線がでてくる作品は?

A7 これをつきとめるのが大変でした。『美しき闘争』に東京―熱海間が出て来るのですが、東海道新幹線が開業する以前の62年の新聞連載作品です。後年、単行本や文庫本化される際に、より今日的な旅として描くため、改稿されたようです。同様に『殺人行おくのほそ道』(64~65年)でも東京―京都間が登場するのですが、週刊誌連載時は在来線でした。『葦の浮船』(66~67年)で、近村達子というヒロインが、名古屋―東京間に乗ったことが確定しました。清張はなぜ、新幹線の登場を遅くしたのか、ちょっと不思議です。

東海道新幹線 試乗会 1963年 ©石井正彦 /文藝春秋
こちらは東海道新幹線700系新幹線のぞみ号 2001年

Q8:いわゆる大手私鉄16社のうち、清張作品に登場しないのはいくつ?

A8 4つです。登場順に社名を並べると、西鉄の『或る「小倉日記」伝』、京阪の『ひとり旅』、東急の『父系の指』、小田急の『箱根心中』、京王の『地方紙を買う女』、近鉄の『眼の壁』、東武の『日光中宮祠事件』、営団地下鉄の『失踪』、名鉄の『黄色い風土』、西武の『蒼ざめた礼服』、南海の『雑草群落』、京成が出て来る『Dの複合』と続きます。京急と相鉄は登場しません。『塗られた本』は、阪神間が舞台の1つであり、阪神か阪急を登場させたら、と惜しい気がします。

 私鉄の初乗り距離は全部で1478キロですが、やっぱりという感じで、近鉄が長いですね。

 

Q9:最初にでてくる路面電車は?

A9 『ひとり旅』(54年)で、広島駅から宇品の港までが登場しました。被爆から1年半後という時代設定で、街の様子が描かれています。都電も相当出てきます。『点と線』『時間の習俗』の三原警部補は、考え事をするために乗る癖があります。『砂の器』の今西栄太郎刑事は聞き込み先に行く時によく利用しました。

 

Q10:清張作品に最後まで登場しない路線のある都道府県は?

A10 沖縄県には清張が執筆した時代に旅客鉄道がなかったため、除外しますと、唯一、長崎県が出てこないのです。『或る「小倉日記」伝』で、主人公の田上耕作は生まれた時から難病を負っており、父親に連れられて博多や長崎の医者に行きます。長崎線に乗ったと判定したかったのですが、「列車で行った」と書かれていないのです。また、佐賀―長崎間は2経路あり、それも考慮して見送りました。

清張鉄道1万3500キロ

赤塚 隆二(著)

文藝春秋
2017年11月10日 発売

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点と線―長篇ミステリー傑作選 (文春文庫)

松本 清張(著)

文藝春秋
2009年4月10日 発売

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