文春オンライン

連載サウナ人生、波乱万蒸。

姉妹の病気、家業を継いでほしい父とのバトル… 33歳IT企業の女性社員が、奈良県で“サウナ付きホテル経営”に“転身”した理由

姉妹の病気、家業を継いでほしい父とのバトル… 33歳IT企業の女性社員が、奈良県で“サウナ付きホテル経営”に“転身”した理由

ume,yamazoe#1

2021/10/12
note

毎日が父との戦い

「寿司の製造業って全然利益が出ないんです。買いたたかれるし、原価もかかるし。『どこかでもっと違ったキャッシュポイントを作らないと会社としてまずい』と、会社や父親に対して憤っていて、本当に天狗の状態で戻ってきました。

 もともと何千万単位のお金を動かしてきたのに、1日10万円程度の売り上げの店舗に立って一日が終わっていく。大きな企業でやってたことを自分の力と過信してたんですよね。だから、毎日が本当に父との戦いでした。でも姉妹が病気だったので、後継者は私しかおらず、父も必死だったんだと思います」

古民家の良さを遺したリノベーション
 
 

 時には蕁麻疹も出るくらい、心身共に追い詰められながら働いていた梅守に転機が訪れる。

ADVERTISEMENT

 それは、寿司製造販売から寿司体験ツーリズムへの事業拡大だった。

当時はお客さんが多くて1日1000人

「当時、お寿司の製造だけだではなかなか利益出ないので、障がいを持った方や、子ども会、高齢者施設などを対象に、自分で握って食べるお寿司の体験教室を行いたいと父は考えていました。自分の姉妹もそうでしたが、特に重い障がいの子が楽しむ場所は少ないんです。そういう方たちが普段はできない体験をする場所を作りたいと思い、お寿司の体験教室を始めたんです。

 その当時、日本中がインバウンド需要を見込んでいたタイミングだったので、奈良県も、ホテルやレストランなどの事業者を集めて、各国の旅行会社さんを巡り営業を進めていました。それに参加してこいと父に言われ、両親に聞き取りをして、企画書を書いて英訳しました。初めて行ったのが香港の営業だったんですけれど、まだ全然中身も固まっていませんでした(笑)。

 でも、2、3カ月後に海外のお客さんが来ることが決まり、ドタバタで寿司体験『うめもり寿司学校』を始めました。そうしたら、多くて1日1000人くらいのお客さまがいらして、すごく成功したんです。自社商材と職人で行うので製造原価はほとんどかかりませんし、寿司はお客様が自分で握られる。“教える”という業態に変えただけで、非常に会社の利益が改善しました」