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米光 一成
2017/12/03

“ぷよぷよ”開発者が振り返る“テトリス”との衝撃の出会い

米光一成が『テトリス・エフェクト』(ダン・アッカーマン 著)を読む

『テトリス・エフェクト 世界を惑わせたゲーム』(ダン・アッカーマン 著/小林啓倫 訳)

 公式版だけでも数十のバージョンがあり、売り上げ合計は十億ドル以上と推定されるメガヒットゲームといえば?

 そう「テトリス」である。ぼくは二十四歳のときゲームセンターで「テトリス」に出会った。上から一個ずつ落ちてくる棒やL字のブロックを操作し隙間なく並べて消す。シンプル!

 にもかかわらず、やめられない。百円玉を積んで遊びつづけることになる。衝撃を受け、影響を受け、ぼくは「ぷよぷよ」というゲームを作った。人生を変えられた。

 その世界的大ヒット、落ち物ゲームの元祖「テトリス」の開発とライセンス争奪戦の内幕を暴いたドキュメンタリーが本書だ。

 テトリスが誕生したのは一九八四年のソ連。ゴルバチョフが書記長になる前年。まだペレストロイカも情報公開もない。鉄のカーテンが降ろされている時代。

 テトリスを開発したパジトノフが使っていたのは十年前のコンピュータの模造品。しかも、ビデオゲームは退廃した西側諸国が生み出したものだから遊べない。

 そんな環境でゲームを作った。だから、シンプルにならざるを得なかったのだ。

 テトリスが持つ面白さが鉄のカーテンを超えていく。それはドロドロのライセンス争奪戦へと発展していくのだが……。

 日本から乗り込むヘンク・ロジャース。交渉の相手は、いまだ資本主義的な思考がなじまぬ秘密官僚体制の新組織。ロジャースはモスクワ空港に降り立つが、組織がどこにあるのか、パジトノフに会えるのかすら未知数。しかも、西側のやり手ロバート・スタインがすでに権利を確保していると主張している。

 さらに開発者パジトノフにはテトリスが売れても一円も入ってこない。何故なのか。それはどうなるのか。

 圧倒的な「面白さ」の前で右往左往する大人たちの争いを描き、テトリスを軸とした八〇年代の世界情勢が立ち上がってくる第一級のノンフィクションだ。

ダン・アッカーマン/1974年生まれ。テクノロジー・ニュースサイトCNET編集者。主にビデオゲームやガジェットについて記事や動画を投稿。多くのメディアでライター、コラムニスト、コメンテーターとして活躍。ニューヨーク在住。

よねみつかずなり/1964年生まれ。「ぷよぷよ」開発者として知られるゲームデザイナー。ライターに転身後、数多くの記事を執筆。

テトリス・エフェクト―世界を惑わせたゲーム

ダン・アッカーマン(著),小林啓倫(翻訳)

白揚社
2017年11月1日 発売

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