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〈西村京太郎 死去〉軍人だった少年が十津川警部を生むまで 「裏切られたり、騙されたりしたことも、何度もあります」

2022/03/06

source : 週刊文春 2016年06月02日号

genre : エンタメ, 読書

note

70歳で結婚「ここが終の棲家になるでしょう」

 華やかな京都暮らしは、平成8年に終わった。西村さんは自宅で倒れたのだ。

 お正月に目が覚めたら、右手の感覚がないんです。起き上がることもできないから、山村さんに電話して。救急車を呼んでもらったんです。脳血栓でした。幸い手術をしたら回復して執筆はできるようになりましたが、9月に山村さんが亡くなったんですよ。山村さんの娘さんたちも東京にお嫁に行っていたから一人になってしまって。医師から温泉でのリハビリを勧められたこともあって、12月に湯河原に移りました。

 しばらくは旅館から病院に通っていましたが、正月には出なければならなくなって。近くのマンションを買いました。部屋は170平米で、30畳くらいある広いベランダに、山から降りてきた猿が遊びに来るんですよ。1年くらいしかいませんでしたが、面白いところでした。

 70歳のとき、初めて結婚しました。奥さんとは湯河原に来てから知り合いました。秘書を務めてくれていたのですが、もう辞めると言うから、逃げられてはいけないと思って(笑)。楽しいことに目を向けさせてくれる人なんですよ。すごくしっかりしていて、何ごとも彼女に任せておけば間違いないと思えます。

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 今の湯河原の家は3階建てで、奥さんの設計です。僕のわがままも聞いてもらって、3階に温泉を引いています。窓が線路と同じ高さになっていて、お風呂から新幹線がよく見えるんですよ。ここが終の棲家になるでしょう。

(取材・構成 石井千湖)

〈西村京太郎 死去〉軍人だった少年が十津川警部を生むまで 「裏切られたり、騙されたりしたことも、何度もあります」

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