利用者が増える一方の“ふるさと納税”。返礼品競争が加熱するなか、その実態と注意すべき問題点を、財政学者の橋本恭之・で関西大学教授が解説する。(出典:文藝春秋オピニオン 2018年の論点100)

72億から2540億へ。過熱する「ふるさと納税」 

 ふるさと納税は、納税者にとっては自己負担額をはるかに上回る豪華な返礼品を獲得できるお得な制度であり、自治体にとっては返礼品というコストを支払っても、それ以上の見返りを期待できる制度となってしまった。2008年の制度発足当初は、返礼品を提供している自治体も限られ、自己負担額も5000円だったため、日本全体でも寄附金総額は72.6億円にすぎなかった。その後自己負担額の2000円への引き下げ、控除限度額の引き上げ、返礼品競争の過熱に伴い、2016年には2540.4億円にも達している(図1参照)。

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 返礼品競争を抑制するため総務省は、3度にわたって返礼品規制に関する通知を出している。2015年の通知では換金性の高いプリペイドカード等、高額又は返礼割合の高い返礼品、2016年の通知では商品券など金銭類似性の高いもの、電気・電子機器、貴金属など資産性の高いものの送付が規制対象に加えられた。2017年の通知では、返礼品の返礼割合は30%以下とする、当該地方団体の住民に対する返礼品の送付はおこなわないという措置が追加された。