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“恋愛経験なし”の42歳男性が年下女性に恋をした…一歩を踏み出せない男性に作家・伊集院静が“贈る言葉”「それが男と女というものだ」

『大人への手順』より #2

2022/04/23

source : 文藝出版局

genre : ライフ, 人生相談, ライフスタイル, 読書

note

「人と人がつながる時は…ごく自然にやって来る」 

――何のことですか?

 と思われるでしょうが、私は偶然に、その当時のガールフレンドの、まったく知らなかった面で、しかも人間として素晴らしい一面を目にしてしまうことがありました。

 ハンディのある人を懸命に救おうとしていた行動を見て、私は再婚を決めました。

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 しかしそれを偶然の遭遇とも思いませんでした。人と人がつながる時は、そういうことが、ごく自然にやって来るものなのでしょう。

 “鬼の形相”、“怒鳴り声”も、偶然とは考えずに、なぜ見る運命にあったのだろうか? と考えてみるのも、大人の見識かもしれません。

©文藝春秋

72歳でプロポーズを決意。しかし家族からの反対が…

プロポーズしようか迷っています。先生なら、ドンと行け! とおっしゃると思うのですが、私は72歳で相手は80歳。子供たちからは今さら家族を増やさなくてもと反対されています。女性の方が長生きなので、彼女を悲しませるのではないかと心配です。でも、色々な苦労をしてきた彼女を幸せにしたいという気持ちをプロポーズで伝えたいのです。(72歳・男・無職)

 何も迷うことはありません。

 あなたが相手の方を、想う気持ちを大切にすべきですね。

 相手の方の、これまでの生き方をよくご存知のようですから、彼女もあなたのプロポーズをお受けになるでしょう。

 “72歳で、今さら家族を増やしても……”と言う、お子さんたちの考えは間違っています。

 72歳から家族が増えることの方に、意義があるのです。

 今、流行りの“終活”や“断捨離”というものに、不必要なものを切り捨てなさい、と唱える人がいますが、私はそう思いません。

 身ひとつでスッキリと言いますが、果してそうでしょうか。煩わずらわしいものが失せれば、それは有難いことでしょうが、新しい人間がそばに来るということは、煩わしいこととは違います。

 きっと、あなたが想像しなかった、思わぬことがあらわれ、あなたの気持ちをゆたかにしてくれるはずです。

 いつ、どこで、どんなふうにプロポーズをしたらいいか。

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