いわゆる「高学歴ワーキングプア」が大発生している昨今。ファーブルに憧れて昆虫学者を目指した著者も、かつてはそのひとりだった。そんな彼が活路を見出したのが、単身アフリカのモーリタニアへと渡ること。文化の違いや過酷な環境に苦しめられつつユニークな体験を重ね、辛酸も嘗めたが、いつしか本業はもちろん、ブログや動画配信での情報発信でも評価される日本の虫業界の人気者に。満を持して上梓した本書も、快調に部数を伸ばしている。
「弊社には以前にも、『昆虫はすごい』というヒット作がありました。最初に原稿をいただいたときには、その流れに連なるような科学エッセイを想定していました。しかしいただいた原稿には、そうした内容もありつつ、夢を持って生きる人がどうそれを実現するのかを描いた、成長物語の要素が色濃く出ていたんです。この内容であれば、50代以上の男性を中心にした通常の新書読者層だけではなく、小学生くらいまで本の射程を広げられるのではないか。そんなことを編集する際には意識していました。実際、日能研の模試で問題文に使われもしたそうで、うれしかったですね」(担当編集者の三宅貴久さん)
表紙やタイトルのインパクトも手伝ってか、読者層は老若男女と幅広い。
「虫に関する本は近年、反響が大きいんです。昆虫は誰しもが子供のころに接する、ひとつの原体験だからでしょうか」(三宅さん)
2017年5月発売。初版8000部。現在9刷10万部