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菅野 朋子
2017/12/23

「核武力完成」を宣言した北朝鮮 なぜ経済制裁は無意味なのか?

残る選択肢は2つ。対話か、それとも軍事衝突か。

 11月29日、北朝鮮が「核武力完成」を宣言した。

 北朝鮮は同日未明に行った新型のICBM(大陸間弾道ミサイル)「火星15型」の発射実験に成功したとし、「目標とするミサイル体系の完結版」と豪語した。

「火星15型」の最高高度は4000kmを超え、飛行距離は950kmと観測された。これは通常の角度で打てば1万3000km以上となり、米国本土にまで到達すると推算されている。

 マティス米国防長官は、「世界最大の脅威」とし、各国もすぐに制裁強化などの強い態度を表明した。ところが、12月12日、「前提条件なしで北朝鮮と対話する用意がある」とティラーソン米国務長官が発言し、国際社会は騒然となった。

韓国を訪問した際のティラーソン国務長官 米国務省サイトより

 中露はすぐに「歓迎」の意を表したが、韓国ではこのティラーソン発言をめぐり、戸惑いが広がった。慶南大学の金根植教授は、「ティラーソンの発言がトランプ大統領の意向を受けたものなのか見極めなければいけません。それが確認できない限り、北朝鮮としては動きようがないでしょう」と分析していた。

 その後、ホワイトハウスはティラーソン発言を否定したが、15日には、国連安全保障理事会の会合に北朝鮮代表が異例の出席をし、すわ米朝対話へ進むかとも注目された。しかし、北朝鮮はミサイル・核開発は「自衛のため」と発言し、肝心のティラーソン国務長官は、「対話を始める前に北朝鮮は挑発行為の停止を続ける必要がある」と前言を撤回。“北朝鮮事態”は、あっという間に振りだしに戻ってしまったかのように見える。

 このドタバタの後、韓国のある北朝鮮専門家は、「ティラーソン発言がホワイトハウスの意向を受けているものなのかどうかを議論する前に、中露が賛成票に投じたように、韓国政府も歓迎の意志を表明して既成事実化するべきだった」と北朝鮮と対話するチャンスをみすみす逃したと残念がっていた。

金正恩はオバマ再選に自分も一助したと思っている

 米国が迷走する中、米誌『フォーリン・ポリシー』は、「北朝鮮がミサイル・核実験を60日間停止すれば、米国との直接対話の道が開けるという約束を米国が破ったと北朝鮮が不満を露わにしている」と報じた(12月13日)。言われてみれば、北朝鮮は9月15日から11月29日までの2カ月ちょっとの間、ミサイル発射実験を行っていない。

「実は北朝鮮は過去にも米国から約束を破られたと思っている」と韓国の全国紙記者は話す。

「2012年11月、オバマ前米大統領の再選をかけた大統領選の前に、米国から密使が平壌に2度(その年の4月と8月)送られました。当時はなぜ密使が送られたのか謎でしたが、その目的は、『外交軍事政策を緩和させて米国と関係改善するよう説得し、大統領選挙期間中はミサイル・核実験を行わないよう要請すること』というもので、実際に金正恩はその年の4月に人工衛星と称したミサイル発射実験を行い失敗していましたが、その後は打ち上げていませんでした。つまり、金正恩はオバマ再選に自分も一助したと思っているのです」