「きてます」「ハンドパワー」といったセリフと共に、超能力ともマジックともつかない“超魔術”を繰り出して日本中を驚かせたMr.マリック(73)。

 そんな彼に、マジックとの出会い、マジシャン以前の就職先で目にした恐怖、23歳で手にしたマジック世界大会の優勝と直後に味わった挫折などについて、話を聞いた。(全3回の1回目/2回目に続く

Mr.マリックさん ©文藝春秋

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天才少年との出会いがきっかけに

――中学2年の時に転校してきた少年が、マリックさんとマジックを引き合わせたそうですね。

Mr.マリック(以下、マリック) 私は岐阜の生まれで、中2の終わりに名古屋からの転校生が来たんです。私の隣の席になった彼が、マジックの天才少年だった。隣の席だからいろいろと話して打ち解けるじゃないですか。そのうちに「明日、『町のチャンピオン』というテレビに出るんだけど」と教えてくれたので見てみたら、彼が人前でマジックをしていて。それがうまいものだから、ビックリしちゃってね。

――そこらへんの中学生とは違ったオーラを放っていたわけですか?

マリック やっぱり、人前で本格的なマジックをやる子ですからね。お父さんがマジックに熱心な方でアマチュアの会に入ってらして、しかも名古屋ではトップレベルの腕前で。また、その会は初代・引田天功さんが習いに来るほどレベルの高いところで、彼はそこで勉強していましたから。

中学生のときのMr.マリックさん

――最初に彼が目の前で披露してくれたマジックというのは。

マリック 彼は教室ではマジックをやらなかったし、やっているなんて私以外は知らなかった。『町のチャンピオン』を見て「あんなの、どうやってやるの?」なんて聞いたら「どこかで、また見せるよ」と答えたきりで。そうしたら課外授業で、長良川の河原で写生することになって。それで石をどれくらい遠くへ飛ばせるかなんてやってたら、彼の投げた石がパッと空中で消えたんです。

 たとえば、その子がカバンから手品の道具を出してなにかを披露するのなら、「ああ、それがあるからできるんでしょ」っていうね。でも、タネも仕掛けもない河原で拾った石ころを魔法使いのごとくパッと消すから、「なんなんだ、この転校生は?!」と思って。で、彼の後ろをついていった。