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がんの「怪しい民間療法」を見抜く三つの方法

週刊文春「徹底検証 著名人がすがった『がん民間療法』」取材の裏側(後篇)

2017/12/28

 なぜ、がんになると多くの人が民間療法を利用するのか。その理由について、前々回前回と考察してきました。

 取材を通して、「再発への不安」「医療に対する不信感」「治る可能性に賭けたい気持ち」の三つが、理由として浮かび上がってきました。そうした心理が背景にあるために、健康なときには眉唾に見えた民間療法を試したい気持ちに駆られるのでしょう。

 民間療法が上記のような心理状態にある患者さんの気持ちに寄り添うものであるなら、頭から否定すべきものではありません。患者さんの体と心が癒されているなら、健康を害するものではない限り、どんな方法でも構わないと私は思うのです。

 しかし、そうした心理につけ込んで、患者さんを集めようとしているのではないかと思わざるを得ない民間療法家や健康食品などの販売業者がいることも否めません。どうすれば、そうした「怪しい」民間療法家や業者を見抜くことができるのか、このシリーズの最後に書いてみたいと思います。

<怪しい>その(1)
奇跡的な「体験談」や「症例」を強調している

 まず、最初に注意すべきなのが「体験談」です。民間療法や健康食品のホームページを見ると、患者さんの体験談として「医者も見放したがんが消えた」「余命半年と言われたがんが治った」と言った奇跡的な症例を紹介していることがよくあります。

 しかし、前回も書いた通り、がんの中には稀とはいえ、自然に治ってしまうケースが医学誌にも報告されています。また、再発・転移したがんでも、手術、抗がん剤、放射線などの治療で治るケースや長期に延命できるケースがあります。

 つまり、民間療法や健康食品で治ったように見えても、他に要因があるかもしれないのです。ほんとうにその方法に効果があるかどうかを見極めるためには、どれだけの人がそれを受けて、どれだけの割合で治った人がいるのかを示してもらわなければわかりません。

 より科学的に言えば、数百人以上の患者さんを対象に、民間療法や健康食品を利用するグループと利用しないグループとを無作為に分けて、数ヵ月、数年にわたって追跡し続け、前者のほうが後者に比べて死亡率が減ることを示さなければいけません。この臨床研究の方法を「ランダム化比較試験」と言い、実際に薬などの治療の効果を調べるのに行われています。

 つまり、たんに「こんな奇跡的な症例があった」と言われても、それが本当にその民間療法や健康食品の効果なのかどうかわからないのです。そもそも、その奇跡的な症例の裏には何十倍、何百倍、何千倍もの効かなかった人たちがいるはずです。

「奇跡的に治った」症例の裏には、何百倍、何千倍の効かなかった人がいる ©iStock.com

本に載っていたたくさんの体験談は「ねつ造」だった

 かつて、キノコやサメ軟骨の効果を宣伝する本を出していた出版社が、薬事法違反(当時)で摘発されたことがありました。その出版社の本には患者さんの体験談がたくさん載っていたのですが、ほとんどが「ねつ造」であったと明らかになっています。

 うまくいかなかった症例を隠して患者を集める手法は、不誠実と言わざるを得ません。ましてや、症例をねつ造していたとしたら、言語道断です。ですから、奇跡的な症例ばかり強調している民間療法や健康食品ほど、「怪しい」と疑って見たほうがいいのです。