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仕事になかなか手をつけられない人は「高いフラペチーノを頼むべき」? “先延ばしグセ”を回避する意外なヒント

臨床心理士・中島美鈴さんインタビュー#2

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究極の快楽主義になってみる

中島 作業をせざるを得ない状況を作りだすことも有効です。例えばパソコンを使う作業なら、パソコンの充電が半分くらいの状態で、充電器を持たずにカフェで作業してみる。そうすると、脱線している場合じゃないんですよね。減っていくバッテリーとの戦いになってくるので、かなり燃えます(笑)。

 あとは、人ってある程度投資したものに対しては元をとろうとする性質があるので、例えば700円ぐらいの高いフラペチーノを頼むのもいいかもしれません。700円分は仕事して帰らないと、損した気持ちになるでしょうし。

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 それから、東京でやるのは恐ろしいですが、車でカフェに行って、有料の駐車場に止めたらどんどんメーターが上がっていきますよね。うかうかしていられないので、作業を早く終わらせることができます。

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――それは、いつもの何倍も早く作業が終わらせられそうです(笑)。

中島 終わった後のご褒美を設定するのもいいですね。それも日時指定系のご褒美の方が効果的です。「20日までに全部終わらせるぞ」と決めたとしたら、20日の16時からマッサージを予約してしまうんです。

 ぶっちゃけ作業が終わらなくてもマッサージには行けるんですが「どうせなら『終わった』って解放感とともにマッサージ受けたらもっと気持ちいいだろうな」って想像してみるといいですね。終わらないまま行って「本当はご褒美じゃないのにな……」と嫌な気持ちになるところも想像してみる。爽快にするのも不快にするのも自分だと思ったら、少しやる気が湧くと思います。

――確かに、まだ作業が残っていたら心からマッサージを楽しめませんね。

中島 究極の快楽主義になってみる。同じアイスでも「我ながらよくやった」と思いながら味わうアイスは最強ですから。

 あと、社会的なプレッシャーを利用するのもいいですね。仕事なら、上司や取引先に「今週中に提出します」と自分で宣言してしまう。宣言するのはなるべく家族以外の甘えられない相手がいいですね。自分で設定した締め切りを守れば信頼感が得られたり、「こんなに早くありがとう」と言ってもらえたりするかもしれません。

イレギュラーにも柔軟に対応するコツ

中島 作業の段階を細かく区切ってみるのもおすすめです。例えば確定申告なら、全部一気に終わらせようと思うとすごく大変なので、ひとまずレシートを集めてみようとかですね。それもちょっとハードル高いなと思ったら、5分使ってe-taxのIDとパスワードを思い出してみようとか。それすら面倒くさかったら、作業が終わった後のご褒美を何にするか考えてみるだけでもいい。

 仕事でも同じです。資料を出して見るだけ見ようとか、最初の一歩を軽くすることが大事なんですね。