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大地震が発生したとき「地下」と「地上」ではどちらが安全? 自然災害で命を守るために“本当に必要”な認識とは

『揺れる大地を賢く生きる 京大地球科学教授の最終講義』より #2

2022/10/07

genre : ライフ, 社会

note

 こうした状況が続くと、オオカミ少年状態、つまりその情報を誰も受け付けなくなるようになり、地震への危機感や警戒心が薄れてしまい本当の巨大地震が起きた際に、役に立たない恐れがあります。

 皆さんには、緊急地震速報は一刻も早く予測を出すためのシステムであり、空振りを生じさせないことより「見逃し」がないことを重視しているということをお伝えしたいと思います。

過剰に専門家に頼る状況をつくらないように

 地震の専門家が、もし「正しい情報を出すのは自分たちだけだ」という思いを強く持っていると、オオカミ少年状態を怖れ、萎縮(いしゅく)するようになります。また、一般市民が「専門家が出す情報はいつも正確で、市民は情報の受け手だ」と考えていると、「専門家が何でもやってくれる」という思考停止になってしまいます。

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 現在のように新型の自然災害がいつ発生してもおかしくない状況で、こうした専門家と市民の依存関係が作られると、自然災害に対してきわめて脆弱(ぜいじゃく)な社会になってしまいます。専門家サイドは不必要な完璧主義を脱し、一般市民のほうも過剰に専門家に頼る状況をつくらないようにしてほしいと思います。

 自然に対しては、完璧を求めず、「不完全」を受け入れる勇気を持つことが肝要だと考えています。

大地震が発生したとき「地下」と「地上」ではどちらが安全? 自然災害で命を守るために“本当に必要”な認識とは

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