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無罪主張にも一理あり? 「4630万持ち逃げ男」弁護士の言い分

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 新型コロナ対策の特別給付金4630万円が誤入金され、全国の注目を集めた山口県の男。電子計算機使用詐欺罪で起訴された田口翔被告(24)の初公判が10月5日、山口地裁で開かれ、無罪主張を展開した。

 司法担当記者が解説する。

「田口被告は今年4月、山口県阿武町が間違って振り込んだ現金をオンラインカジノ用の決済口座に移し替え、これが『電子計算機使用詐欺罪』に当たるとして起訴されました」

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 黒いスーツに長い髪を後ろに束ねた田口被告。法廷で「間違いありません」と事実関係を認めた上で、「法律については弁護士に任せます」と言葉を継いだ。

山口地裁に入る田口被告 ©時事通信社

「弁護士は全面無罪を主張しましたが、法律的にはあながち荒唐無稽とも言えず、全国の法曹界の関心も高いのです」(前出・記者)

 どういうことか。カギとなるのは、1996年の最高裁の判例だという。

「判例は誤入金について『受け取った時点で口座の名義人のもので、自由に引き出せる』との判断を示しているのです。日々の膨大な取引の中で、銀行としていちいち入金が正当なものか判断できない、というのがその理由。弁護側はその最高裁判例を下敷きに、カジノ口座に移し替えたのは正当な預金なので虚偽入力はしていないとして無罪を主張しています」(同前)

 もちろん、検察側も法律のプロ。反論を予期していなかったわけではない。