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連載テレビ健康診断

亀和田 武
2018/01/21

正論だけど、なんだかなぁ。『池の水ぜんぶ抜く』 ――亀和田武「テレビ健康診断」

『緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦6』(テレビ東京)

 すごいんだってね、テレ東の『池の水ぜんぶ抜く』。昨秋は二度も大河を抜いて、視聴率は二ケタ超えという。

 どんなものなのか。けっこう期待して、正月の三時間スペシャル観ましたよ。

 最初に抜いたのは、住宅街にある横浜の池。「子供のお腹を食いちぎる凶悪カメ五〇〇匹を捕獲せよ!」とナレーションがスタートから煽る。

 公園を地元の子供ら二千人が取り囲み、作戦開始前から大変な騒ぎだ。ポンプ十三台が登場し、新型ポンプも使って一気に水抜き。おとなまで大騒ぎだ。ナレーションは「覚悟しろ、アカミミ!」と吠える。ミシシッピアカミミガメ。危険外来種として、番組最凶のヒール役だ。

これがミシシッピアカミミガメ ©iStock.com

 水を抜いたら、ゲストの満島真之介を先頭に外来種駆除が始まる。アカミミが出てくる出てくる。子どもは難なくカメを掴まえて、大ハシャギ。巨大魚も映り、外来のコイということで画面は、さらに狂騒状態へ一直線だ。

 で、観ている側の私は、それと反比例して、徐々に退屈モードに入っていく。ともかく、凶暴な外来種vs絶滅に瀕した在来種。これが番組最大の錦の御旗だ。捕獲作戦を始めた経緯も、小学生が池の岸にパンを置いたらアカミミが三十匹やってきて、男の子がその一匹を捕まえ抱いたらお腹を噛まれたと。「僕が思うには、ここにいるカメを駆除してもらいたいだけです」と台本棒読みふう発言で緊急作戦の発動だ。なんかなあ。

 ともかく外来種は生態系を破壊する敵。正論です。でも十八年前に田んぼを潰して作った横浜の住宅地にある池は人工池だ。在来も外来も一匹もいなかった。里山の生態系が壊されたのとは大違いだ。映像にも飽きた。カメの次は巨大な外来コイ。何十匹も捕獲されると、またかと思う。

環境大臣まで登場だ(『緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦6』より)

 カネは無くても、知恵はある。これがテレ東だ。だけどこの番組、良心的な教育番組になっちゃってる。環境大臣までテレビに出てきて、外来種を駆除し生態系を守る良い番組だとお墨付きを与えた。

 公序良俗になじむ番組って、テレ東には似合わないよ。

 いまから四年前、井の頭公園のかいぼりで、自転車が大量に出てきた映像は衝撃だった。しかし『池の水』を抜いても凶悪カメやブルーギルばっかじゃ、驚きはない。さらに国も認める立派な内容。環境省の政務官が、子供と一緒に池の泥水を顔に浴びて善き人を(結果的に)印象づける構成も、何か嫌ァな感じだ。

▼『緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦6』
テレビ東京 1月2日放送