昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

連載テレビ健康診断

尾美としのりという役者のすごさにやっと気づいた――青木るえか「テレビ健康診断」

『越路吹雪物語』(テレビ朝日 )

2018/01/28
尾美としのり(©文藝春秋)

『おんな城主 直虎』でおとわの子役やってた子が『わろてんか』でてんちゃんの子供時代やるって、いいんでしょうか。でも子役が少ないからしょうがないのか。じゃあ『わろてんか』に遠藤憲一や高橋一生が出てるのはどうなんだ。大河ドラマと癒着してんのか。最近こういうのが目につくよなあ。『西郷(せご)どん』に瑛太がキャスティングされてるのも、『篤姫』を思い出すから私なら絶対やらないが……私がやってるわけじゃないのでしょうがないけど。

 俳優の数には限りがあり、なおかつ「人気俳優で視聴率を取る」という考え方がある以上、いろんなドラマに同じ俳優がやたら出てくるのはガマンせねばならない。

 と、諦めていたんですが、その考え方がそもそも間違っているのではないか、ということに気づいた。『越路吹雪物語』を見ていて。

 これ、テレ朝の昼ドラなんだけどNHKの朝ドラにあまりにもそっくり。戦前戦中に生きる歌の好きな女の子がこの先どんなふうにして「越路吹雪」になるのか、というのが見る前からすべて想像できる。細かいところも朝ドラフォーマットを完璧に再現しており、主人公の元気少女が高いとこにのぼって落っこちる場面が出てくるところなど「朝ドラをつくるアプリ」というものがあったとしたら「場面アイテム」の基本をまずは並べてみました級の朝ドラっぷり。

 で、主役の父をやってるのが尾美としのりだ。こないだまで出てたじゃん『直虎』に(局は違うが)! これもかよ! 直虎見て「お、いいね尾美ちゃん」でキャスティングしてるんじゃないのか!

 が、見て驚いた。『直虎』の尾美としのり(榊原康政)と『越路吹雪物語』の尾美としのり(主人公の父)。同一人物と思えない。というか別人だよ! これだけ別人なら、連続でキャスティングされたって納得できる。一生やエンケンは役を演じるというよりも「一生やエンケンである」ことが重要視されてるような芝居っぷりだった。それに比べて尾美としのりの役者魂にすっかり感動させられている。一生もエンケンも瑛太も、前の役をみじんも思い出させないような芝居をやってくれりゃ納得するのだが。とにかく『直虎』~『越路吹雪』の流れで尾美としのりという役者の凄さにやっと気づいたわけです。いつの日か大河の主役にでもなってくれないものでしょうか。が、尾美としのりでは数字は取れないか……。

▼『越路吹雪物語』
テレビ朝日 月~金 12:30~12:50