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「日本にいた頃はよく『怒られて』いましたが…」海外移住して初めて気づいた「謝罪の儀式」の“不毛さ”とは

『東南アジア式「まあいっか」で楽に生きる本』#2

2023/02/06

source : ノンフィクション出版

genre : ライフ, 読書

note

日本では「反省している姿を見せるべき」と考える人が大多数

 しかし今でも何かことが起きると、当事者を容赦なく引き摺り出して、「反省している姿を見せるべき」と考える人が日本では大多数です。学校や企業だけではなく、生活の場においても同様です。

 新型コロナウイルスの感染が広がった当初、日本ではコロナに感染した芸能人が、「ご迷惑をおかけしてすみません」と謝る事例がたびたびありました。マレーシアでは、「病気にかかった人」がお詫びする姿など見たことがありません。それは、「病気にかかってしまうのは仕方がないこと」と考えるからなのです。

 もちろん電車や飛行機の遅れで謝ることもありません。謝罪があってもサラっとしたものです。何かミスをしたとしても追及せず、

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「おお、ソーリーソーリー」

 という感じです。つられてこちらも、

「オッケーラー(いいよ)」

 となってしまう。マレーシアに長くいると、こういう感じが身についてきます。

海外でビジネスを成功させる鍵

 実は日本にもそれなりにフレキシブルな組織は存在します。また、海外でモノを売るために、社内公用語を英語にしたり、マネジャーに外国人を採用したりするところも増えてきました。

 そのうち、日本のグローバル化とともにこの「反省カルチャー」も薄まっていくでしょう。人も企業も、無駄な謝罪を求めることで失われる「時間の貴重さ」に気がつけば、社会はもう少し暮らしやすくなっていくと思います。

 これから「世界でモノを売りたい」「海外で働きたい」という人は、日本人的な「序列」の感覚とは別に、どんな相手でもリスペクトするように心がけるといいと思います。

 一方で、シンガポールのリー・クアンユー元首相を驚かせた日本の「何かを改善していく力」や「独自の文化を発展させていく力」「物事を丁寧に成し遂げようとする力」もまた、グローバル社会の中にあってユニークさを持ち続けるでしょう。

 良いところを見習いつつ、日本式とグローバル方式の二刀流を使い分けていくのが、海外でビジネスを成功させる鍵になるのではないでしょうか。

INFORMATION

「本の話」ポッドキャストで配信中

【著者が語る】野本響子さん マレーシアの「まあいっか」ライフ

マレーシア在住の人気コラムニスト・野本響子さんに、「まあいっか」で明るくハッピーに生きるヒントを、3人の子育てでアップアップの担当編集が直撃――気持ちがちょっと楽になる(はずの)トークをお届けします。

「日本にいた頃はよく『怒られて』いましたが…」海外移住して初めて気づいた「謝罪の儀式」の“不毛さ”とは

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