一見不便で給与水準も低いのに、楽しそうな人が多いマレーシアという東南アジアの国。文筆家・野本響子さんは、家族でクアラルンプールに移住して早10年。ここでは新刊エッセイ『東南アジア式「まあいっか」で楽に生きる本』(文藝春秋)を一部抜粋して紹介する。

 英国の慈善団体が世界20カ国の若者の幸福度調査を行ったところ、1位はインドネシア、日本は最下位という結果に。経済的な豊かさと幸福度が結びつかない「逆転現象」の正体とは?(全2回の1回目/後編を読む

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 2020年1月5日、マレーシアの英字新聞「ザ・スター」に、モナシュ大学で行われた「幸せの秘訣は何か、愛と意味のある関係性」という調査報告の記事が掲載されました。

 この調査でも、マレーシア人の67%が自分を「幸福だ」と感じ、回答者の90%が「家族が非常に大事だ」と答えています。面白いのは、収入が低い人の方が幸福を感じる割合が高かったことです。人間関係を重視する点でハーバード大学の研究の調査結果と一致しています。

 英国の慈善団体であるバーキー財団(Varkey Foundation)が世界20カ国の15~21歳の若者2万人を対象に行った2017年の幸福度調査では、(この調査対象には発展途上国を入れており、ユニセフなどが行っている調査とはまたひと味違った結果になっています)1位のインドネシアの若者の幸福度は90%。

日本の若者は、韓国と並んで「最も不幸」

©AFLO

 この調査が興味深いのは、「先進国より発展途上国の若者の方が幸福度は高い」ということです。

 ヨーロッパの若者は世界平均と同じような幸福レベル。

 18位のトルコでは、50%が「大体幸せ」と答えています。

 そして日本の若者は、韓国と並んで「最も不幸」でした。韓国はガクッと落ちて29%、日本は最下位で28%とかなり低いです。

 今の生活に「満足している(40%)」または「非常に満足している(5%)」と答えた日本の若者は全体の半数未満。韓国以外のどの国の若者よりも「自分が不幸である」と考える若者が多かったのです。

 しかし、驚くのは日本の若者が「日本は住むのに良い場所だ」と答えていることでした。「日本はいい国だ」と信じているからこそ、絶望感がますます深まってしまうのではないでしょうか。

 経済的に豊かである国が必ずしも幸福とリンクしているわけではありません。GDPや安全度、健康寿命などを考慮に入れないこちらの幸福度調査の方が、海外に住む自分の実感に近い。この結果が、私がマレーシアに住むようになって感じている「謎の逆転現象の正体」です。