言われてみると、日本人でもコミュニティに溶け込むことはそう簡単ではありません。田舎暮らしで仲間外れになったり、転校生や途中入社組が馴染めなかったり、「公園デビュー」がうまくいかないなどという話を聞きます。「3代住まないと仲間とは認めない」と言われた地域もあったようです。
このようにグループの外の人を「敵」と見なし警戒する傾向があるのではないでしょうか。
アジア人を見る際の「色眼鏡」
シンガポールの故リー・クアンユー元首相は2000年に書いた『目覚めよ日本 リー・クアンユー21の提言』で、日本人の性質を指摘しています。
《私は日本に留学したシンガポールの多くの学生に、日本の印象について調査を依頼したことがあります。「学ぶことがたくさんあった」と答えた学生がほとんどでしたが、「日本が好きになったか」という問いに対してイエスと答えた学生はわずかしかいませんでした。さらに「日本が大好きになった」という学生はほんの一握りでした。とくにアジア人として、まともに歓迎してもらえなかったという意識があるのかもしれません。というのも、日本人はいつも色眼鏡を通してアジア人を見るからです。
私はイギリスに4年いましたが、人種差別を受けたのは下層階級の人たちからでした。バスの車掌やウエイトレスらにはよく馬鹿にされたものです。でも、大学時代の恩師や学友は私に対してとても親切で対等につきあってくれました。(中略)いまは2000年ですが、ある点において日本人はいまだに50年以上も前のイギリス人よりも排他的に思われます。》
20年経った今もあまり変わっていないと思います。そして、別に外国人に対してだけではなく、日本人同士でも同様です。
経済的な豊かさと幸福度は結びつかない?
逆に、マレーシアでは、「初対面の人とすぐ友だちになれるお国柄」と言われます。
先の駐在員を対象とした「住みやすさランキング」の調査でも、回答者の3分の2が「新しい友だちを作るのは簡単」、7割以上が「社会生活に満足している」と答えています。スイスのある駐在員は、「素敵な人が住んでいる、とてもインターナショナルな街」と表現し、インドのある駐在員は「友だちを作るのは難しくない」と回答しています。
「経済的な豊かさと幸福度が結びつかない」というこの「謎の逆転現象」。
日本と東南アジアの人びととの思考の違いはなんなのだろう。このことを、私は初めてマレーシアに来たときからずっと考え続けています。
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【著者が語る】野本響子さん マレーシアの「まあいっか」ライフ
マレーシア在住の人気コラムニスト・野本響子さんに、「まあいっか」で明るくハッピーに生きるヒントを、3人の子育てでアップアップの担当編集が直撃――気持ちがちょっと楽になる(はずの)トークをお届けします。