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「連載2本&サラリーマン(課長)」を両立させる“ただ1人の漫画家”! 40歳の新人・ピエール手塚が「超多忙でも〆切を守る」理由

「40歳、新人漫画家」の生存戦略 #1

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手を動かしていたらなんとかなるだろう

――『ヤングキング』(少年画報社)で不定期連載という形だった『ひとでなしのエチカ』が今年1月から正式に連載が決まりました。

もう1つの代表作『ひとでなしのエチカ』 ©松本輝一/文藝春秋

ピエール手塚 『ひとでなしのエチカ』は隔月ペースでの連載かつ、これまで出した同人誌を加筆修正した内容なので、『ゴクシンカ』に比べると作業は少なくなるはずです。……まぁ同人誌からほとんど丸々描き直しちゃう回もあるんですけどね(笑)。連載が2本になり、ノルマが60ページを超える月もあるので、より気をつけてスケジュールを管理しないといけなくなりました。

――「仕事で必要な資格試験の勉強もしている」とツイートしていました。休む暇がないのでは……?

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ピエール手塚 確かに漫画の作業を全くしない日はありません。独身で自分の好きに時間を使えるから二足のわらじが成立しているのであって、もし家庭を持つことになったら今と同じやり方は不可能だろうなとは感じます。

――スランプのときは、どのように切り抜けているのでしょうか?

「手を動かすこと自体を止めてはダメ」 ©松本輝一/文藝春秋

ピエール手塚 手を動かすこと自体を止めてはダメだと思っています。たとえ出来が悪いと感じたとしても、いったん仕上げてみて、そこから修正したら意外と良いものになったりします。

 そういう意味では、編集者がいる状況は心強いですね。他人の意見を聞けるのはありがたいですし、ひとりで作業しているときでも「あの人がこれを読んだらどう思うだろう?」という視点が入りますから。まぁ「何か思いつくはずだ」という確信さえ持っていれば、最終的にはなんとかなるだろうと思っています。

――「なんとかなるはず」という考え方は、昔からそういう性格なんでしょうか? それとも活動の中で身につけたものでしょうか?

ピエール手塚 ひとりで同人誌を描いていた経験が大きいですね。同人誌ではネームを切らず、いきなり原稿を描き始めていました。だから、その物語がどういうオチになるのか、何ページになるのか全くわからない状態で作業が進んでいくんですよ。

 ゴールを決めないまま描いているうちに印刷所の〆切が迫ってくるので、「じゃあ、あと10ページで終わらせるか。10ページでどういうオチに持っていこう?」となる。そんなことを何度も繰り返していたら、「まぁ手を動かしていたらなんとかなるだろう」という境地に至りました(笑)。