『ゴクシンカ』と『ひとでなしのエチカ』、2本の連載を抱えるピエール手塚は、漫画家としてはなかなかの遅咲きだ。『ゴクシンカ』で初連載を掴んだのは40歳のとき。創作と並行してIT企業でも働いており、昨年春には課長に昇進した。
もともと商業デビューを意識していたわけではないという“40歳の新人漫画家”である手塚。彼が作品に込める思いとは?(全2回の2回目/前編を読む)
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『将太の寿司』の熱狂的ファンとしても有名
――手塚さんはデビュー前から『将太の寿司』の熱狂的なファンとしてネット上の一部の界隈で有名でしたね。
ピエール手塚 はい。2016年に開催された寺沢大介先生の原画展では、イラストをリクエストできるサイン会も行われました。普通は将太くんや味皇(『ミスター味っ子』)といったメインキャラを頼むと思うんですが、僕は大和寿司の親方をリクエストしたので、「それは誰だっけ……?」と寺沢先生を困らせてしまいました。
――『将太の寿司』に登場するアナゴ寿司の名人ですね。生き別れた息子とのエピソードなどは感動的ですが、登場シーンが多いわけではないので、たしかに作者が忘れていても仕方ないような……。
ピエール手塚 「そんなこともあろうかと大和寿司の親方の原画を購入しておきました」と原画を取り出したので、それはそれで戸惑わせてしまって(笑)。
自分が漫画家になってから寺沢先生と対談させていただく機会があったのですが、「サイン会のあの客はお前だったのか」と言われました。サイン会で変なお願いをしてきた客、ネットで定期的に『将太の寿司』の話をしているやつ、たまたま目にした漫画の作者。その全てが同一人物とわかって驚いたみたいです(笑)。
――漫画家になってから寺沢先生との交流はありますか?
ピエール手塚 Twitterを通してやり取りしたり、一緒にご飯を食べに行かせてもらっています。「コミティア(オリジナル作品限定の同人誌即売会)出るけど、お前も出るんだろ?」と声をかけていただいたりとか。すごく良くしてくださるので恐縮しています……!
――先輩漫画家としてアドバイスをくれるようなことは?