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「歌いたい。けど需要がない」歌の仕事が20年間まったくなかった千秋が、ずっと目を背けてきた“一番やわな部分”とは

「歌いたい。けど需要がない」歌の仕事が20年間まったくなかった千秋が、ずっと目を背けてきた“一番やわな部分”とは

千秋さんインタビュー#1

2023/03/18

genre : エンタメ, 芸能

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「歌いたいのに歌う場所も機会もない、どんなに言い続けても誰も相手にしてくれない。
全く需要がないのだろう。悲しくて悔しくていつしか口に出すのをやめてしまった。
本当は歌うことが大好きなのに。」

 そんな切実なメッセージとともに千秋さんのYouTubeが開設されたのは2020年12月23日のことだった。

 90年代にポケットビスケッツとして2枚のミリオンセラーを出し、現在もワイドショーやバラエティ番組で見かける機会が多いのと裏腹に、歌う千秋さんを見かける機会は確かに驚くほど少なかった。

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 ほとんどシリアスな発言をしないキャラクターを超えて溢れた本音。20年間の沈黙を破った理由とは。

千秋さん ©文藝春秋 撮影・杉山拓也

◆ ◆ ◆

――去年6月、20年ぶりの新曲『GREEN FLASH』をリリースされました。久しぶりのレコーディング、どんな気持ちになりましたか。

千秋さん(以降、千秋) 私が芸能界に入ったのは歌手になるためで、「永遠の歌手志望」って今でもずっと言ってるんです。だけどここ20年くらいは、歌の仕事が本当になくて。そんな中で自力でリリースまでこぎつけることができて、純粋にうれしかったです。

「唯一自分の中で人に見せないようにしてきた弱い部分を吐き出してもいいんじゃないか」

――千秋さんといえば、ポケットビスケッツのイメージが強いです。『YELLOW YELLOW HAPPY』(1996年)でミリオンセラーを叩き出し、98年の紅白歌合戦にも出場されました。

千秋 たしかにポケビではヒット曲を出せたけど、解散後にソロになったらまったく売れなかったんです。事務所にも「カラオケ大会でもフェスのゲストでも、なにか歌の仕事ないんですか」としつこいくらい聞き続けたけど、ほんっとになにもない。ポケビはもう過去の栄光で、自分に歌手としての需要はないんだと思い知った20年でした。

ポケットビスケッツの「YELLOW YELLOW HAPPY」は120万枚のミリオンセラーに

――2020年の年末、SNSで「心から歌いたいけど、歌う場所がない」と赤裸々に告白されました。https://www.instagram.com/p/CH2Oushgh-E/

千秋 ふだんの私って飄々としてて、悩みとは無縁な感じに見えると思うし、実際、仕事で悩んだことはないんです。でも、歌だけは違って。小さいときから本気で望んできた夢だから、弁慶の泣き所というか、自分の中で一番やわな部分なんです。

 それでもファンの人からは「もう歌わないんですか」「ポケビを復活してほしい」みたいな声をもらうこともあって。その度に「私だってほんとはやりたい。やりたいんだけど、やれないんだよ……」って、説明できないもやもやを抱えてました。

 その気持ちをちゃんと一度説明したかったし、唯一自分の中で人に見せないようにしてきた弱い部分を吐き出してもいいんじゃないかと思ったのが、SNSで発表をしたタイミングでした。

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