東海道新幹線にはどの駅から乗るべきか——。この問題はあんがい根深く、東京や首都圏の人々を悩ませている。
おおざっぱに言えば、これまでは東京駅と品川駅が二大勢力だったといっていい。どちらも新幹線があろうがなかろうが、東京を代表するビッグターミナルなのだからケチのつけどころがない。そしてその二大勢力の陰に隠れていたのが新横浜駅である。
東京、品川と比べると…
実は、などと振りかぶらなくても先刻承知かもしれないが、神奈川県内はもとより、東京南部・多摩地区から東海道新幹線に乗ろうとする場合、意外と新横浜駅が便利だ。
出張などの折、当たり前のように東京駅や品川駅出発のきっぷを渡されてしまうことがある。そこで「あ、実は新横浜から乗りたいんです……」などと言い出せずに、「おお、ありがとうございます!」などと朗らかに応じてしまう。そんな経験をしている人、結構いるのではないか、と思うのである。
まあつまるところ、思いのほか便利なのにもかかわらず、新横浜駅は首都圏から新幹線に乗り込むターミナルとして、いささか地味な存在にとどまっている、というわけだ。
「新横浜から乗るの?」はもう過去のものに…?
そんな新横浜駅が、いまにわかに注目されている。なんで……というのは各所で盛んに報道もされ、広告を目にすることも多いアレだ。
今年の3月18日、東急・相鉄新横浜線の開通で、東急東横線や目黒線が新横浜駅まで乗り入れるようになる。東横線も目黒線も都心部では地下鉄に直通しているから、その先の各駅からも乗り換えなしで新横浜へ、という実に便利なルートが確立されるのだ。
たとえば、東武東上線からも地下鉄副都心線を介して東横線、そして新横浜へというパターンもあるから、新横浜からだいぶ遠いイメージの、東上線沿線の人々も乗り換えなしで新横浜へ。
となれば、いままで一顧だにすることのなかった新横浜で新幹線乗り換えというルートが急浮上することになる。新幹線に乗るような泊まりの旅では荷物が多いこともあって、何度も乗り換えるのは面倒くさいですからね……。
というわけで、新幹線にどこから乗るか問題の勢力図が、新横浜駅の台頭によって大きく変わろうとしているのだ。もう数年も経てば、「新横浜から乗るの? へえ、珍しいね」などと言われることはなくなるのである。