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WBC元代表コーチが明かす「どんだけ打てなくても打率1割の4番村上宗隆にコーチが技術的指導を行えないワケ」

WBC元代表コーチが明かす「どんだけ打てなくても打率1割の4番村上宗隆にコーチが技術的指導を行えないワケ」

2023/03/16
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 だが、大谷やヌートバーらは違う。「初球からストライクが来る」と考えて、積極的に打ちに行く。それが好結果につながっていると橋上は分析している。それだけに今回参加した3人のメジャーのバッター、とりわけヌートバーの活躍は、栗山英樹監督にとっても「してやったり」のところがあったはずだ、と言う。

大谷翔平 ©文藝春秋  撮影・鈴木七絵

4番打者・村上宗隆の不調の背景には…

 一方で4番を打つ村上宗隆(ヤクルト)の不調は誤算だったに違いない。昨シーズンは史上最年少の三冠王を獲り、「侍ジャパンの打の中心になる」と見られていただけに、4試合を通じて14打数2安打、2打点、5四球、打率1割4分3厘は厳しい結果と言わざるを得ない。その要因を、橋上はこう分析する。

「大谷という規格外の、自分よりもはるかに上の実力を持った打者を見たことで、『自分も大きなあたりを打たなくちゃいけない』という強い責任感が、力みと焦りにつながったのではと見ています」

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 橋上は19年、ヤクルトの二軍チーフコーチとなったとき、村上の野球に取り組む姿勢を見続けていた。真摯に野球に向き合い、技術の向上に常にどん欲だった。

「村上をドラフトで獲得したときの監督だった小川淳司さん(現ヤクルトゼネラルマネージャー)は、村上の育成について『本人がコーチに聞いてくるまであれこれいじるな。本人の考えに任せよう』と言って、コーチ陣は遠くから見守るようにしていたんです。村上本人は、ああでもない、こうでもないと試行錯誤しながら野球に向き合っていた。自分に足りないものは何か、身につけるべき技術は何か、相手はどんな配球をしてくるかなど、1つの山を越えたら、また大きな山を越えていく、というように、謙虚な姿勢で野球に取り組んでいました」

不調の村上宗隆 ©文藝春秋 撮影・鈴木七絵

 幾多の苦難を乗り越えてつかみ取ったのが昨年の三冠王だったのだが、今年はチーム内で「大谷翔平」という自分より遥かに上の実力を持った選手を目の当たりにした。3月6日にメジャー組の出場が解禁された阪神戦で、大谷が放った2打席連続3ランの衝撃は、村上自身にもあったはずだ。

 けれども、橋上は「今回のWBCの経験は、これから先の村上のプロ野球人生に必ず生きてくる」と断言する。

「これまで自分で考えながら野球に取り組んだ結果、日本のプロ野球の最高峰のレベルまで到達することができたのですから、彼には絶対乗り越えられると思っています。ここから先の戦いの巻き返しに期待したいですね」

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