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WBC元代表コーチが明かす「どんだけ打てなくても打率1割の4番村上宗隆にコーチが技術的指導を行えないワケ」

WBC元代表コーチが明かす「どんだけ打てなくても打率1割の4番村上宗隆にコーチが技術的指導を行えないワケ」

2023/03/16
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 侍ジャパンの快進撃が止まらない。WBC第1ラウンドで、初戦から4連勝し、B組を1位通過。今日、いよいよ準々決勝でイタリアと対戦する。

打線を変えたメジャーリーガー3人の力

 13年の第3回WBCで侍ジャパンの戦略コーチとしてチームに同行していた橋上秀樹(現独立リーグ・新潟アルビレックスBC監督)は、1次ラウンド4連勝は「打撃陣におけるメジャーリーガー3人の力が大きい」と話す。

「大谷翔平、吉田正尚、ラーズ・ヌートバーが3月6日の強化試合の阪神戦に登場して以降、打線のつながりが目に見えて良くなりました。彼らが加わる前と以降では、まったく違いますよ」

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大谷翔平とヌートバー ©文藝春秋 撮影・鈴木七絵

 なかでも橋上が評価するのはヌートバーの積極性である。

「第1ラウンド初戦の中国戦で、トップバッターだったヌートバーは、相手投手の初球のストレートをいきなりセンター前ヒットにした。これが日本人選手だと、相手投手の配球などを読むあまり、初球から手を出すことをためらうことがあるが、ヌートバーは躊躇せずに打っていった。メジャーでは日本のように配球云々というよりも、初球からストライクをどんどん投げ込んでくる。こうした国際大会ではどれだけ積極的に好球必打ができるかがポイントですが、ヌートバーはまさにうってつけのトップバッターだったと言えます」

 ヌートバーは第1ラウンドの4試合を通じて14打数6安打、3打点、2盗塁、4四球、1死球、打率4割2分9厘と、チームの核弾頭として見事な働きを見せた。

じっくり見極めてから行くか、初球から打ちに行くか

 それにしても――。橋上の指摘通り、彼ら3人が加わって以降は、侍ジャパンの打線のつながりが目に見えて良くなった。3月3日の強化試合の初戦となった中日戦では2対7と敗れ、翌4日に再び行われた中日戦では4対1と勝利したものの、打線のつながりの課題が残ったままだった。

 なぜメジャーリーガー3人が加わる前と加わってからで、こうも打線が変わったのか、橋上は「日本人選手の警戒心」を理由に挙げた。

絶好調のヌートバー ©文藝春秋 撮影・鈴木七絵

「少々過激な言い方をすると、日本人選手は得体の知れないものについては、じっくり見ていこうとする傾向が強い。ストレートの速さはどのくらいか、変化球のキレはどの程度か、コントロールはいいのか悪いのか……。挙げればいくつも出てきますが、そうしたものを2~3球程度見極めてから狙い球を絞って打ちに行こうとする傾向が強いんです。

 もちろん国内のプロ野球であれば、そうした打ち方でもいいでしょう。初球はボール球から入ってくることだってあり得ますし、たとえ追い込まれても配球を読んでどうにかしようとすることだってできる。

 けれども国際大会は違います。球数制限がある関係で、初球からウイニングショットを投げ込んでくることもあれば、ストライクボールをガンガン投げ込んであっという間に追い込んでしまいたいと考えたがるものなのです。ですから日本のプロ野球のようにじっくり見に行ってしまうと、あっという間に追い込まれてしまって、思うような結果が出なくなる、なんてことになりがちなんです」

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