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WBC元代表コーチが明かす「どんだけ打てなくても打率1割の4番村上宗隆にコーチが技術的指導を行えないワケ」

WBC元代表コーチが明かす「どんだけ打てなくても打率1割の4番村上宗隆にコーチが技術的指導を行えないワケ」

2023/03/16
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「ここに集まっている選手は何のために呼ばれたのか?」

 高代は「お前さんの言うことも一理ある」と同意した。けれどもすぐさま「でもな、坂本の守備で日本が負けたらどうする?」と切り返すと、井端は「たしかにそうですね。わかりました」と納得して、坂本にアドバイスを送った。

「ここに集まっている選手は何のために呼ばれたのか? 『日本を優勝に導くため』に選ばれた精鋭たちです。前にWBCのコーチは限られたことしか教えることができないと話しましたが、明らかに間違っていると思われる技術は正していくことでミスを犯すリスクが減らせますし、現役のトップクラスの技術を持つ選手から話してもらったほうが、より説得力が増すということはあります」

橋上秀樹 ©文藝春秋

 と橋上は話す。今回のWBCでは栗山英樹監督は「今回の代表選手はあえてキャプテンは決めない」方針を示していたが、メジャーの大舞台を10シーズン経験しているダルビッシュを中心にまとまりを見せている。彼の発する言葉の数々を、若い選手たちはこれから先のプロ野球人生に生かしていきたいと考えているに違いない。

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日本が世界一になるチャンスは十分

 侍ジャパンは戦前から優勝候補の一角に挙げられていたが、予想通りの展開になってきた。世界一を達成する可能性について、橋上は「十分にあり得ます」と力を込める。

「次戦のイタリア戦を勝ち抜けば、アメリカに移動して日が経たないうちにフロリダ州のローンデポ・パークで準決勝、決勝と戦うことになる。私たちのときは、肌寒い東京から灼熱のアリゾナへ移動してからの、極寒のサンフランシスコへ移っての準決勝だった。今回は東京から比較的過ごしやすいフロリダに滞在しての準決勝となるので、コンディション面で見れば時差以外には大きな障害となるものはないと思います。

 それにメジャーリーガーを多数抱えるアメリカや中南米の優勝候補のチームは、肝心のメジャーリーガーが試合勘、コンディション面ともにまだまだ調整不足のように思える。日本が世界一になるチャンスは十分あると思いますよ」

栗山英樹監督 ©文藝春秋 撮影・鈴木七絵

 栗山の采配について、橋上はどう見ているのか。

「極めてオーソドックスな采配です。奇策を用いるようなこともなく、力と力の勝負に徹している。今回選ばれた選手の能力を考えれば、それでも十分でしょうし、どんなに不振でも村上を4番から外すことはしないでしょう。日本ハムの監督時代、中田翔を4番に据え、大谷の二刀流挑戦を貫いた信念は、侍ジャパンにおける村上の起用法にも表れていると、私は見ています。いずれにしても、この先の侍ジャパンにも期待したいですね」

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