三浦瑠麗 国際政治学者
「テロリスト分子がいるわけですよ。それがソウルでも、東京でも、もちろん大阪でも。今ちょっと大阪やばいって言われていて」

『ワイドナショー』 2月11日 

 今週の珍言、暴言、問題発言を振り返る。平昌冬季五輪が開幕し、あらためて韓国、北朝鮮との関係がクローズアップされている中、国際政治学者の三浦瑠麗氏がテレビ番組『ワイドナショー』に出演し、「スリーパーセル」と呼ばれる北朝鮮の暗殺部隊が大阪に潜伏していると発言した。

 番組での三浦氏の発言の概要は次のとおり。

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「実際に戦争が始まったら、テロリストが仮に金正恩さんが殺されても、スリーパーセルと言われて、もう指導者が死んだっていうのがわかったら、もう一切外部との連絡を断って都市で動き始める、スリーパーセルっていうのが活動すると言われているんですよ」「テロリスト分子がいるわけですよ。それがソウルでも、東京でも、もちろん大阪でも。今ちょっと大阪ヤバいって言われていて」

三浦瑠麗氏 ©文藝春秋

 三浦氏の発言に対しては「根拠を示すべき」という批判の声が起こったが、三浦氏は自らのブログで「政治家や官僚との勉強会や、非公表と前提とする有識者との会合から得ている情報もあるので、すべての情報源を明らかにすることはできません(原文ママ)」としつつ、根拠の一つとして英国「デイリー・メール」に掲載された北朝鮮に関する記事を示した(2月12日)。

 しかし、オンライン百科事典のウィキペディアは「事実確認に乏しく扇情的で、まったくの作り話」であることを理由に同紙からの引用を禁じると2月8日に発表したばかりだ(AFP BB NEWS 2017年2月10日)。つまり、それほど信憑性に乏しいメディアということだ。著述家の古谷経衡氏は三浦氏の発言を「工作員妄想」と表現している(Yahoo!ニュース 2月13日)。

 在日コリアンが多く住む大阪を名指しにしたことから「在日コリアンへの差別・偏見を助長するのではないか」という批判も起こっている。これに関して三浦氏は、ハフィントンポストの取材に対して「私は番組中、在日コリアンがテロリストだなんて言っていません。逆にそういう見方を思いついてしまう人こそ差別主義者だと思います」と反論した(2月12日)。LINE上級執行役員の田端信太郎氏は「在日=北朝鮮の工作員なんて、一言も、三浦さんは言ってないでしょうが。それを連想ゲームで勝手につなげてるほうがよっぽど偏見であり、ヘイトだよ」と同様に三浦氏を擁護している(ツイッター 2月12日)。

 しかし、「在日特権を許さない市民の会(在特会)」の創設者であり、日本第一党の党首である桜井誠氏はかつて「半島有事の際には日本国内に潜伏した朝鮮人たちがテロを起こします。我々はだれがなんと言おうとも必ず『朝鮮人狩り』を行います」と宣言したことがある(CNN iREPORT 2013年4月13日)。このようにテロリストへの疑念とヘイトは非常に結びつきやすい。

 批評家の東浩紀氏は「テレビの地上波でそんなこと不用意に言ったらヘイトの口実に使われるに決まってる」と断じ、「諸悪の根源はそもそも『なんでもかんでも韓国朝鮮人を難癖つけて叩こうとする腐った日本人』どもなんですよ」とツイートした(2月12日)。ごもっともである。

山田宏 自民党・参院議員
「面白ジョーク?見つけた。『ドイツ人が発明し、アメリカ人が製品化し、イギリス人が投資し、フランス人がデザインし、イタリア人がPRし、日本人が小型化、高性能化して、中国人が海賊版を作り、韓国人が起源を主張する』ホント、地球は丸い!」

ツイッターより 2月12日

 元杉並区長、元次世代の党幹事長で、現在は自民党の参院議員の山田宏氏のツイートが物議を醸した。この文章は匿名掲示板「2ちゃんねる」(現在は「5ちゃんねる」)で広まった有名なもの。書籍『コーヒー噴いた 2ちゃんねるの笑える話』(ぶんか社)によると、2007年の書き込みとされている。2014年11月9日にはタレントのフィフィ氏もまったく同じ文章をツイートしていた。

山田宏参院議員 ©共同通信社

 NPO法人フローレンスの代表理事を務める駒崎弘樹氏は「国会議員が、こうした隣国を侮辱する内容のものを『面白ジョーク』として嬉々としてツイートすることが、信じられない」「真に愛国者ならば、むしろ隣国から学び、より切磋琢磨していくべきではないか」と批判した(ツイッター 2月13日)。また、ルポライターの安田峰俊氏は「2018年版」として「イスラエル人が発明し、アメリカ人がグローバル化し、韓国人と台湾人のメーカーが進歩させ、中国人が自国向け最適化の過程で魔改造し、日本人が流れに乗り遅れて一周遅れてから『中国はパクっているからダメ』と自国内では精神勝利法により勝利する」と切り返してみせた(ツイッター 2月13日)。

 山田宏氏はかつて大きな反響を呼んだ「保育園落ちた、日本死ね」ブログに対して、「まぁ落書きですね」「生んだのはあなたでしょう」「親の責任でしょ、まずは」などと発言したが、その直後、妻から愛人と隠し子の存在と自宅に月に2、3回しか帰ってきていないことを告発され、「愛人に子供を産ませたのはあなたでしょう」と批判されたことがある(『週刊文春』2016年4月28日号)。