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エースが言った「大丈夫!」の重み…巨人・菅野智之の素顔を知る熱血アナが“復活”を信じる理由

文春野球コラム ペナントレース2023

2023/06/17
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 文春野球コラムの読者のみなさま、2回目の登板となります、フリーアナウンサーの阿出川浩之です。

 初登板は私の自己紹介的なコラムになりました。今回の登板からは私が過ごしたジャイアンツとの時間や、選手との思い出などをつづっていきたいと思います。

 6月16日現在、ジャイアンツは交流戦・単独首位! 2014年以来の交流戦優勝へ向けてラストスパートです。

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 その勢いを加速させるうれしい出来ごとがありました。チームの大黒柱・菅野智之投手、復活! ファンにとっては待ちに待った心躍る知らせです。

 そんな菅野投手との思い出を振り返ります。

菅野智之 ©時事通信社

エース・菅野智之の素顔

 私は2017年から春季キャンプ中継のMCを担当させていただくことになりました。その準備のために1月後半は何度もジャイアンツ球場へ通い、選手のみなさんの取材をさせていただきました。

 一番印象に残っているのは、2019年ジャイアンツ球場でのことです。当時の広報・矢貫俊之さん(現3軍投手コーチ)と室内練習場で話していたら、菅野投手が現れました。

 すると、キャッチボールを始めたエースが、ふと話しかけてくれたのです。

「今日も取材ですか?」「春季キャンプを毎日1人で話すのは、大変じゃないですか?」

 私は図々しくも「よかったら、ぜひ放送席に来ていただけるなんて……ことは……」。

 菅野投手は即答でした。

「わかりました。時間見つけて行きます」

 思わず私は「えーーーーーー!」と声をあげてしまいました。

 もう一度私は、「無理ない範囲でいいですから」と伝えると、菅野投手は一言「大丈夫!」。隣にいる広報の矢貫さんは「本人がOKならいいですよ」。出演交渉成立です。エースの粋な計らいに感謝しかありませんでした。

 春季キャンプが始まり、スタッフに「どこかでエースが来てくれます」と伝え、ドキドキワクワク過ごしていました。

 1軍は2月中旬に宮崎から沖縄へキャンプ地を移します。沖縄の球場は放送席と選手の行動範囲が近いので、期待が高まります。

 ある日、放送を終えて球団の方と定食屋さんで夕食をご一緒する機会がありました。私は次の日の準備もあり、少し遅れて合流することになりました。

 お店の扉を開けて、どこにいるだろうとキョロキョロしていたら、一番手前のテーブルから「アデさん!」と声がしました。目線を落とすと、なんとそこには菅野投手の姿が! 驚きすぎて、思わず「なんで?」と声が漏れました。

 続いて菅野投手から「アデさん、紹介するね。丸です!」。

 向かい側にいたのは、なんと丸選手でした!

 丸選手は立ち上がり私に向かって、

「初めまして、今シーズンからお世話になります。丸です」

「えーーーーーー! いや存じ上げていますし、ご挨拶いただくなんて申し訳ありません」

 これが丸選手との初めての出会いでした。

 その時に菅野投手が「この沖縄で行くね」と言ってくれました。

 私は驚き続きで、「無理なくで」と言うと、菅野投手は一言「大丈夫!」。その時の焼き魚定食の味は忘れません。

 その数日後、放送席にエースが来てくれました。野球への取り組み方、考え方、「現状維持は衰退」、厳しい世界で戦う覚悟……。エースの心にふれ、感動しました。

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