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なぜ新電力の値上げが激しいのか…「電気代が安くなる」という甘い言葉のウラにある真実

source : 提携メディア

genre : ライフ, ライフスタイル, 経済

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事例を一つ紹介しましょう。

都内の賃貸マンション在住のAさん(30代女性)は、不動産管理会社が指定した新電力と契約していました。節約志向であまりエアコンを使わないため、電気料金は月平均3200円(平均使用電力量は約80kWh)、夏場でも4500円程度に抑えられていました。しかし、2022年秋から請求金額がジワジワと高くなり、2023年1月には6000円を超えました。使用電気量はこれまでと同様、80kWh程度だったにもかかわらずです。

新電力会社は値上がりの理由を「燃料費調整額の上昇」と説明しました。東京電力に切り替えたAさんの電気料金は、国の負担軽減策もあって、現在の料金は2500円程度に収まっています。

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なぜこのようなことが起きたのでしょうか。

※1 電力自由化によって新たに参入してきた、大手電力会社以外の電力会社のこと

自由料金は燃料費調整額に大きく左右される

月々の電気料金は、「基本料金」「電力量料金」「燃料費調整額」「再生可能エネルギー発電促進賦課金」を合計した金額です(図表1)。

「燃料費調整額」を計算するための「燃料費調整単価」は、電力会社が発電に使用する原油・LNG(液化天然ガス)などの価格変動や為替レートを加味して決定します。自由料金プランが高騰した背景には、この燃料費調整額の上昇があります。

燃料費調整額は毎月変動し、燃料費が基準価格よりも低ければ電気料金から減算、高ければ加算されます。たとえ価格が上昇しても、規制料金であれば上限が設けられていますが、自由料金だと上限を設けていないとか、新電力の中には独自の計算方法をするところもあり、変動幅が異なることがあるのです。

規制料金の値上げには「お墨付き」が必要

規制料金とは、電力の小売りが自由化される以前から、東京電力や関西電力など、大手電力会社10社が提供していたメニューのことで、いずれ廃止される予定ですが、経過措置として現在も提供されています。規制料金の場合、燃料調整単価の改定は電力会社の一存で行うことができないので、上限を超過した分は電力会社が負担していました。

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