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森下翔太の初球フルスイングは、四球の多い“岡田調”阪神打線を進化させる

文春野球コラム ペナントレース2023

2023/08/01
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ウル虎6連戦を勝ち越し、いざロードへ

 いよいよ夏本番、勝負の8月です。我らがタイガースは、高校球児たちに本拠を明け渡してロードに出ます。京セラドームも貸してもらえて、「死のロード」でもなんでもありません。その期間、今季まだ勝ちがない横浜スタジアムで6試合組まれていますので、そこをうまく乗り切って、引き続き首位戦線を主導していきたいところです。

 交流戦後半以降、投打ともに低調な時期があり、最大18あった貯金が一時は10まで減りました。しかし、チーム状態を上げてきた読売、広島と対した「ウル虎の夏6連戦」を4勝1敗1分で乗り切り、貯金も14まで持ち直しました。

 連戦連勝だった5月は圧倒的な投手力の強さがありましたが、現在はずば抜けて強いという印象はありません。でも、セで唯一、開幕から一度も借金を背負っていませんし、3位以下に順位を落としたこともありません。もっとも長く首位にいますし、DeNAと広島に首位を奪われても、すぐに奪い返しています。「不思議と強い」それが今年の阪神です。

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 特に不思議なのが攻撃力です。打率は、中野が3割近辺、大山と近本は.280を割ってしまいました。好調だった木浪聖也選手も.270を割ってしまいました。及第点はそのあたりまで。他の選手は2割チョボチョボかそれ以下です。チームには自信を持って「強打者」と呼べる選手がいません。チーム打率.239は、リーグ5位で最下位とほぼ同じレベル。それなのに、1試合あたりの得点数は3.72で、トップに極めて近いリーグ2位。不思議です。

岡田調のキモは「ボール球を振らない」

 守備位置同様、打順をほぼ固定しているので、なんとなく点を取る「流れ」「型」みたいなものができていて、それをメンバーが共有しているように感じます。個々でなんとかするとか、打線の機能で投手を攻略するというより、ふわっとしたまとまりで、ぼやっとしたやり方で相手を攻め、得点にしていく。それを、仮に点を取るための「調」とでも呼びましょうか。

 8番木浪が多機能を担うなど、「岡田調」にはいくつか特徴があるのですが、なんといっても特筆すべきは四球の多さでしょう。前年まで早打ちだった大山、近本、中野がそれぞれ四球の数でリーグ1位、4位、5位。チーム四球数は341で、2位ヤクルト(298)に大差をつけています。

 詳しいことは知りませんが、年俸を決める査定において四球の評価を高く設定したり、試合によって「見逃し三振」の評価を軽く設定したりするという話も聞こえてきます。戦略・戦術をきちんと予算に落とし込むのが岡田調のやり方です。

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