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30代でレギュラーを掴み、カープに欠かせない存在となった広陵時代の同級生・上本崇司のこと

文春野球コラム ペナントレース2023

2023/08/22
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内に秘める思いは誰よりも強かった高校時代

 高校時代を振り返ってみると、今と変わらず、口数は少なかったですが、内に秘める思いは誰よりも強く、情熱的でかっこいい男でした。

 入部してきたときは、捕手もできるという触れ込みの選手でした。試合でバッテリーは組んだことはなかったですが、たしか練習で何回か受けてもらったことがあると記憶しています。

 お兄さんが元阪神の上本博紀さんというレジェンドで、広陵高校では誰もが知っている存在でした。その弟ということで、どんな選手なのかと気になっていましたが、守備を初めて見たときに、めちゃくちゃ柔らかくて上手いなと思ったのを覚えています。

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 しかし、打撃はまだ4番打者を打つようなタイプではありませんでした(笑)。

 その後、1年生の秋からレギュラーだったんですが、試合に出るたびにどんどん成長していました。素質のある選手は成長スピードが早い印象なのですが、崇司も最初はパワーがなかったのが、段々とコンタクト率も良くなり、長打を打てるようになりました。

 そして3年夏の甲子園、横浜高校との試合でまさかのレフトスタンドに先頭打者本塁打。入学当初の打撃を知っていたら考えられないことでした。それだけたくさん練習していたんです。

「俺みたいな選手は打たんと使ってもらえん」

 崇司のことで印象的なのは、2020年オフの自主トレです。マツダスタジアムでバッタリ会ったんですが、ずっと打撃練習をしていました。それを見て「めちゃくちゃ打つやん」って言ったら、「俺みたいな選手は打たんと使ってもらえん」と返ってきました。

 当時は守備固めや代走要員での控え選手でした。守備や走塁の練習も大事にしていましたが、それ以上にとにかく打力を伸ばそうと必死になっていました。トレーニングも、それまでやってなかったわけではないのですが、いっそう努力するようになっていました。

 過去にキャンプで打撃練習のメンバーに自分の名前が入っていなかったことがあり、それが相当悔しかったようです。生き残るためには打たないといけない。俺みたいな選手も打たないとレギュラーにはなれない。そう何度も口にしていました。

 すると、2021年に芽が出てきて、2022年は打率.307。もう控え選手としての姿はありませんでした。

 ただ、まだ崇司の第一章は始まったばかりだと思っています。これから30代後半で本塁打王を獲ってもらって(笑)、40歳を過ぎてもレギュラーで出続けて、第二章、第三章を描いてほしいです。

 今はチームの戦いを見て、気が気がじゃないと思います。現状に納得もいかないし、悔しい気持ちもあると思います。僕としても早く戻ってきてもらいたい気持ちはありますが、少し身体を休めてもらって、心技体を充実させて、最後の最後で大活躍してもらいたいです。あと、トレーニングのことや、サプリメントのことでわからないことがあれば相談に乗るので、連絡してください(笑)。

 広陵魂!

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