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病死、孤独死から水死まで「遺体修復師」の仕事とは「生前とかけはなれた姿で、火葬するのではなく…」

「有限会社統美」インタビュー #1

2023/08/26

genre : ライフ, 社会

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染谷 私たちが「統美」を創業したときは、「特殊修復」をうたう納棺業者は少なかったと思います。ご遺体を入浴させ、洗浄や清拭でお清めをすることを「湯灌の儀」と呼ぶのですが、もともとは大阪が発祥と言われています。東京で始まったのは、今から30年ほど前なので、「湯灌の儀」自体、東京ではあまり知られていないことかもしれません。

――統美さんの創業は1999年です。まだ、「湯灌の儀」が一般的ではない中で、どうして遺体の特殊修復というさらに深い領域まで手掛けようと?

染谷 私も角田も以前は「納棺業」を専門とする別の会社で働いていました。しかし、ご遺体をきれいにしてほしいという依頼があるのに、お引き受けできないケースを何度も経験するうちに、自分たちが理想とする「湯灌」を提供できる会社を作りたいと思うようになりました。二人で独立して、あらたに立ち上げた会社が統美になります。

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遺族からの依頼の届き方

――統美さんは、納棺業を専門とする会社……ということは、葬儀社とは違うわけですよね。となると、特殊修復の依頼というのは、葬儀社から届くのでしょうか?

角田 そうなります。葬儀社がご遺体と対峙して遺体修復が必要と判断した場合に「遺体修復を専門に行う業者がいます。どうされますか?」とご遺族に案内します。「具体的にどのように修復していくのか」など疑問を持たれた場合は、私たちが直にご説明させていただきます。ただし、私たちとご遺族が金銭的なやり取りを直接することはありません。葬儀というのは、あくまで葬儀社が執り行うことなので。

代表取締役・染谷幸宏さん ©文藝春秋

――なるほど。一昨年、私も父を亡くした際に、香典返しやお花などはすべて葬儀社を介して行いました。納棺(湯灌)も葬儀の一部となるため同様であると。

染谷 はい。葬儀社は葬儀をプロデュースする存在です。さまざまな業種と連携を図りながら葬儀を執り行う。その中の一つに湯灌があって、ご遺体の修復もあるということになります。

水死のご遺体の修復も

――現在、湯灌に対応する納棺業者というのはどれほどあるのでしょうか?

染谷 都内では20社ほどあると思います。ただ、私どもの特長は、24時間最大30名の故人さまを安置できる施設を有していることです。私どもを含めた遺体修復師が防腐処置を行うので、ご遺体を長時間安定した状態で保つことも可能です。そのため高度な特殊修復が可能になります。