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「お釈迦様のような体勢で凍ったご遺体をなんとか納棺してほしい」と…「遺体修復師」が向き合ってきた“難題の数々”

「有限会社統美」インタビュー #2

2023/08/26

genre : ライフ, 社会

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 遺体を特殊技術を用いて修復するプロフェッショナル集団がいる。東京・足立区にある「有限会社統美」は遺体を保全し特殊修復を施すことで、故人の時間を少し戻し、生前の姿をよみがえらせるという。不慮の事故や事件、自死、孤独死、病死などで、大きく遺体が損傷してしまった故人であってもだ。

 同社の代表取締役でもある染谷幸宏さんと、取締役・角田智恵美さんに、これまでに手掛けてこられた遺体修復の実際のケースについて話をうかがった。(全3回の2回目/最初から読む

代表取締役・染谷幸宏さん、取締役・角田智恵美さん ©文藝春秋(撮影:松本輝一)

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事件のご遺体を修復するケースも

――遺体の特殊修復の中には、事件の遺体もあるとお聞きしました。それは、私たちが知っている事件もあるということでしょうか?

染谷 あります。守秘義務があるため、詳しくはお伝えすることができませんが、ニュースの報道であるような凄惨な事件のご遺体の修復を担当するなど、そういったケースもあります。

――その場合、葬儀社と警察、どちらから連絡があるものなのでしょう?

角田 先のケースは、警察から相談を受けた葬儀社から連絡がありました。ご遺族の中にご遺体の修復を希望されている方がいるので何とかなりませんかと。お話を聞いて、私たちならできるかもしれないと思い、ご依頼をお受けしたのですが……凄惨な状態でした。しかし、お受けした以上は責任をもって、ご遺族がきちんと故人さまのお顔を見てお別れをできる状態にしなければいけません。寝る間を惜しんで修復したのを覚えています。

「葬儀社から『最後の砦』と…」

――そうした修復が困難なケースであっても、「統美なら何とかしてくれる」という雰囲気が業界内にあるということなのでしょうか?

角田 どうでしょうか……。依頼されれば、私たちはあきらめません。ただ、そういったケースでは「(ご遺体を)見ない方がいい」「対面せずに火葬した方がいい」とご遺族は伝えられるそうです。しかし、きちんとお別れができなかったことを、後々後悔をされる方が少なくないんですね。

遺体修復の現場には、小さな祭壇があった ©文藝春秋

染谷 最期に会わなかったことが、後悔から罪悪感に変わってしまうケースもあります。たとえば、特殊修復をするしないにかかわらず、湯灌(ゆかん)の際にご遺族自らが参加するだけで、故人さまと向き合う時間を作ることにつながります。何も語りかけることができないという状況が、わだかまりとなってしまいますから。

 私たちは、手を合わせる方々が安心感を抱いてもらえるような状況を作り出したい。それは病死、事故、事件、自死、孤独死にかかわらずこの世を旅立たれる方全員に対してです。そうした統美の理念を理解してくださっているので、私たちは葬儀社の方から、「最後の砦」と言われたりしますね。