遺体を特殊技術を用いて修復するプロフェッショナル集団がいる。東京・足立区にある「有限会社統美」は遺体を保全し特殊修復を施すことで、故人の時間を少し戻し、生前の姿をよみがえらせるという。不慮の事故や事件、自死、孤独死、病死などで、大きく遺体が損傷してしまった故人であってもだ。
同社の代表取締役でもある染谷幸宏さんと、取締役・角田智恵美さんに「遺体修復師」の仕事について話をうかがった。(全3回の1回目/続きを読む)
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「遺体修復師」という職業
――恥ずかしながら、遺体の特殊修復という仕事があることを知りませんでした。基本的なことから教えていただきたいのですが、遺体の特殊修復とはどのようなことをされるのでしょうか?
染谷 事故や事件、自死、孤独死、病死など、思いもよらない状態で亡くなられた故人さまを、生前のお姿に近づけるのが特殊修復です。たとえば、交通事故などで損傷が激しく欠損がある場合には、高度な形成処置を行います。
また、長い闘病生活でお顔が痩せてしまった場合などはシリコン処置をするなど、生前の元気なときの写真と見合わせながら、その人らしい自然な表情、お姿に出来る限り近づけます。私が主に防腐処置や形成を担当し、角田が主に形成後の修復メイクを担当しています。
喪失による深い悲しみを「グリーフ」というのですが、ご遺体が生前のお姿とかけ離れていると、残されたご遺族はきちんと向き合うことができないままお別れをすることになりますし、自らを責めてしまうかもしれない。グリーフをケアするために、特殊修復というプロセスがあるんですね。
「特殊修復」を始めた理由
角田 統美の事業内容は「納棺業」になります。納棺師は、湯灌(ゆかん)師とも言われるのですが、納棺の際、ドライアイスなどでご遺体の腐敗の進行を抑える、含み綿などで表情を整える、死化粧をする、帷子など旅立ちの衣装にお召し替えする、ご遺体を入浴させ洗浄や清拭でお清めをする……こうした業務の中に、私たちは「特殊修復」を設けています。
――映画『おくりびと』は納棺師の物語ですが、統美さんも納棺師になると。「納棺業」の中に、遺体の特殊修復があるというのは一般的なのでしょうか?