遺体を特殊技術を用いて修復するプロフェッショナル集団がいる。東京・足立区にある「有限会社統美」は、遺体保全や特殊修復を施すことで、故人の時間を少し戻し、生前の姿をよみがえらせるという。不慮の事故や事件、自死、孤独死などで、遺体が大きく損傷してしまった故人であってもだ。

 遺体修復師であり、同社の代表取締役でもある染谷幸宏さんと、取締役・角田智恵美さんは、遺体修復の技術の普及に力を入れていきたいと語る。今後の展望について話をうかがった。(全3回の3回目/最初から読む

代表取締役・染谷幸宏さん、取締役・角田智恵美さん ©文藝春秋(撮影:松本輝一)

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遺体修復師になるには

――先ほど、遺体修復の技術を広めていきたいとお話しされていましたが、そもそも遺体修復師は、どのようにしてなれるものなのでしょうか?

角田 現在、日本には「おくりびとアカデミー」など、納棺師になるための学校があります。また、ご遺体に殺菌消毒・防腐や修復をした後に化粧を行うことをエンバーミングというのですが、日本語に訳すと「遺体衛生保全」になります。

 エンバーミングは、専門の資格を持った「エンバーマー(遺体衛生保全師)」が行うのですが、その資格も必要です。直接、私たちに「修復技術を教えてほしい」という方もいらっしゃるので、今後はそういった場を増やしていければと考えています。

――「教えてほしい」と志願される方というのは、同業者の方ですか?

角田 同業者の方もいますし、まったく違うご職業の方や学生さんもいらっしゃいます。昔であれば、「ご遺体=怖いもの」と思われていたのかもしれませんが、利他の精神を持つ人が増えてきているように感じます。現在、5名ほどスタッフを研修していますが、故人さまの体をきれいにしたい、力になりたいという熱意を持っているなと感心しています。

染谷 看護師、介護士、美容師の方などは、ラストメイクやラストカットを含む介護美容の側面から、私たちの仕事に関心を抱くようです。一時期は、遺体修復の後継者が少ないことが課題でもあったのですが、昨今は見直されてきているのかなと感じていますね。