角田 形成する場合は、医療器具を使います。形成的な処置は染谷が、化粧やメイクといった美術的な処置を私が担当しています。
エンバーミングといって、ご遺体に殺菌消毒、防腐や修復をした後に化粧を行い、生前のお姿に整える処置があります。その際には専用のメイクアップ道具を使うのですが、その他にも私たちはありとあらゆるものを試すようにしています。それこそ市販の紙粘土だったり、舞台用のメイク道具だったり、試行錯誤の連続です。
修復の技術は企業秘密だったが…
――枠にとらわれないように施していくわけですか。無手勝流というかアーティスティックというか。だからこそ、唯一無二の高度な特殊修復を実現させているんですね。
角田 そうかもしれないです。都内には、納棺業を行う同業他社が20社ほどありますが、その中には統美で働いていた同僚が立ち上げた会社もあります。各社とも修復やメイクアップの技術をオープンにはしていないので、各々がオリジナルの技術を磨いていく……のですが、それもどうなのかなと思うようになって。
染谷 そもそも遺体修復というプロセスがあること自体、あまり認知されていない。ですから私どもは、そういう技術や専門家がいるということを周知させていかなければならないと思い、今回、文春オンラインさんの取材もお受けすることにしたんです。
角田 今、私たちは“教える側”に立とうと思いながら、いろいろと準備を進めています。やっぱり、「どうしたらこんなにきれいに修復できるんですか?」と聞かれることって多いんです。今までは、弊社の技術は企業秘密だったのですが、これからはご遺体の特殊修復というサービスを広げていきたいという思いがあります。
北は北海道から南は沖縄まで、どこに住んでいても、きちんとお別れができる環境を作らなければいけないなと。私たちが支店を作るとかではなく、その地域に根を下ろす納棺業を営む方々に技術の提供をしていこうと思っています。その地で働いている方が、その地で亡くなられた方々を丁寧に送っていくことが望ましいですから。