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どんな亡くなり方であれ、否定せずに受け入れてほしい
――たしかに、高度な遺体の特殊修復を希望しても、統美さんの本社がある東京から離れすぎてしまうと叶わない。物理的な問題で、最期のお別れを諦めざるを得ない人たちもいるわけですね。
染谷 そうなんです。そこに格差が生まれてしまうのは、私たちとしても望んでいないこと。
角田 私は、事故や事件など特殊な理由で亡くなられたケースを含めて、ご遺族の方に「(死因を)なかったことにしよう」――、それくらいの錯覚を抱いていただけたらと思っています。
先ほど、ご遺体の写真を見ていただきましたが、病死、事故、事件、自死、孤独死……さまざまなケースで人間は役目を終えます。「その人の生き様が死に様にあらわれる」と言われることもありますが、長年、遺体修復の仕事に携わり、さまざまなご遺体に接してきて思うのは、そんなことは決してないということ。
よく、「お払いに行ったりしないのですか?」と聞かれるのですが、行ったこともなければ、塩を盛ることもしないんです。なぜなら、役目を終えたその人が、最期の時に寄り添っている私たちに何かをするとは思えないからです。どんな亡くなり方であれ、その事実を否定せずに、その人を受け入れていただきたい。私たち遺体修復師は、そのためのお手伝いをさせていただいているんですよね。